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「おぉ、さっくんもおるやん」
「こうじーおはよー」
「おはよー。Aーカーテン開けてええ？今日天気いいんよ」
「う、うん」
もやはこの家の住人といっても過言ではない康二は慣れた手つきでカーテンを開けた。でも康二は必ず毎回お邪魔しますと言うし、家のものを使う時は私たちに確認を取る。あくまでも人の家という事を忘れない康二の育ちの良さと丁寧さが周りに好かれる彼の人柄を表していた。
「今日なぁ、テスト飛行なんよ」
「あぁ、だから」
「て言ってもまだ余裕あるねんけどな、目覚めてしもうて。準備さっさと終わらせてのんびり行きたいなーって思ってん」
完成した飛行船のテスト飛行。少し遠くの更地まで行って実際に飛行船を飛ばしながら色々なテストをするんだそうだ。だからこの日は毎回朝が早い。
ひとつの飛行船を作り上げるのには何か月もかかる。だからテスト飛行も数か月に一回ほどの頻度でしか行わない。その一回を康二は楽しみに日々の作業に取り組んでいるんだそうだ。
「ほらめっちゃいい天気なんよ！気持ちええやろなぁ！」
窓の外に広がる青空を見て明らかにテンションが上がっている。今日もワクワクして早く目が覚めてしまったという所だろうか。
「……気を付けてね」
そんな一言だけを残して私は冷蔵庫のジュースを取った。さっきまで手にしていたタッパーには触れずに、そのままパタンと閉じる。
「あ、俺も貰ってええ？」
「うん。朝ごはんどうするの」
「照兄起きたら作ろうかなと思ってん」
もはやうちの専属料理人なのでは。私も料理をしないことはないけど、手際の良さもレパートリーも康二には適わない。
ただ今康二に冷蔵庫の中身を見られたくなくて。あのタッパーの存在がそのまま残っている事への罪悪感が拭えなかった。
「……みそ汁と卵焼きとかでいい？」
「お、作ってくれるん？」
「うん」
「まじかー！ええ朝やなー！」
そんな理由なのに私が作ることに喜んでくれた康二。そもそもこの家に住んでるのは私なんだからそれが普通なはずなのに。
彼らが出かけたらあのタッパーの中身はちゃんと食べようと、康二に見えないように冷蔵庫からみそ汁の材料を取り出してコップについだジュースの残りをしまった。
「さっくんもご飯食べれたらええのになー」
「んー？ご飯？サクマのご飯はじゅーでんだよ」
「あはは！せやんなぁ」
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2022年12月2日 0時
