早朝のタッパー ページ1
・
いつもとは違う日の光を感じて目を開けた。その理由は私がリビングのソファで眠っていたからだった。
体にかけられたブランケットがバサッと落ちて、落ちた先にはサクマが地べたに座って大人しくしていた。ソファから降りて佐久間を覗くと目を閉じてすぅすぅと寝息を立てている。スリープ状態、その名の通り寝ているらしい。
「サクマ」
「……わー、おはよー！」
私が声をかけると一瞬でパチリと目を開けた。スリープ状態は声をかけることで解除できると、改めて阿部ちゃんが言ってたことを思い出す。
「だいじょーぶー？」
「うん」
あれから私は夜中までサクマの腕の中で眠っていて、一度目を覚ますも動くのがだるくてそのままリビングに居座った。しばらくは適当なテレビを観たりしていたけれど、多分記憶が途切れているのでまたその場で眠ったのだろう。
起きた途端ににっこにこ。私の姿を見て朝日に負けないくらい眩しい笑顔を見せるサクマは今日も元気いっぱいなようで。
時間を見るとまだ早朝だった。でもかなりの時間眠っていたらしく目覚めはスッキリしていて、とりあえず何かを飲もうかとキッチンの冷蔵庫を開けた。
“Aへ。温めて食べや！”
目に入ってきたのはそんなメモが貼ってあるいくつかのタッパー。その中身は私が家出をしたあの夜に鍋に入っていたものと一致した。
“お前康二に酷い態度とったんじゃないの”
昨晩の兄のお説教が頭の中に響いた。康二との会話を思い出して、内容はともかく態度は確かに酷かったかもしれないと今更罪悪感にかられた。
「……一日ちょっとだからまだ食べれるよね」
一つ一つのタッパーに書かれている字。“これは温めなくていいやつ”“これは俺の自信作”なんてふざけているんだか真面目なんだか分からないメモ達。主婦かって突っ込みたくなるようなマメさに康二らしいなと少し笑った。
「あーこうじー」
「えっ」
朝ご飯に頂こうかとタッパーたちを眺めているとそんなサクマの声が聞こえた。その瞬間に玄関が空いた音がして「おじゃましますー」とあの人の声。
何故か咄嗟に、そのタッパーたちを冷蔵庫に隠してしまった。
「あ、Aやん。おはよ、早いなぁ？」
なに？サクマってエスパーなの？どんな機能？
「お、おはよ……」
「照兄まだやんな？ちょっと早すぎたかもな」
リビングに入ってきた康二は何らいつもと変わりない様子だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1318人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽぷら
| 作成日時：2022年12月2日 0時
