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「あー…そろそろ行かなきゃな」
その後。他の友達と話したり、例によって写真を撮ったり。卒業式後のわいわいとした雰囲気に混じってこの悲しさを紛らわせようとしていた。
袴を返さなければならない時間から逆算するともう学校を出なければならない。
本当に、彼といれた学生の期間が終わろうとしている。
筒に仕舞われた証書を卒業の記念品が入れられている紙袋にしまった。きっともう、開けることがない気がした。
「あっ、いた！A！」
「……あれ、康二」
「もう、どこいってたん！気がついたらゼミ室おらんし」
少し息を切らした康二が私の前に。相変わらずカメラを下げて、そして手には証書の筒。
「どうしたの？」
「写真撮らせてや」
「え、さっき撮ったじゃん」
「あんなんじゃ足りひんよ」
息を整えた彼はまた笑って、行くでって歩き出す。どこに行くんだろうと思ってついていくと見慣れた場所にたどり着く。
「あれ、ゼミ室？」
「何だかんだここが一番思い出あるやろ」
「でもさっきいっぱい撮ってた」
「……Aだけは撮っとらんから」
そう言いながらゼミ室の扉を開けた康二。もうみんなはいなくなっていてシンと静まり返っている。
「そこ、座って。いつものとこ」
そして私がゼミの時にいつも座っていた席を指差す。大体の位置が決まっていたそこは窓側の1番端っこ。
「……そんな近くから撮るの」
「当たり前やん、前見てて」
そして、康二は私の隣だった。
「……やっぱ綺麗やな」
カシャっとシャッターが切られて。そして画面を見て康二がいつもとは雰囲気が違うような静かな声で呟いた。
「ほら」
「うん、康二の撮る写真は綺麗だよ」
「そうじゃなくて、俺はずっとAが綺麗だって言ってたんよ」
カメラから目線を私に向けた。その瞳はものすごく綺麗で吸い込まれてしまいそう。
「ここから見る横顔が好きやった。こっそり写真撮って怒る顔も、笑ってる顔も、眠そうにしてる顔も全部好きやったんよ」
泣いた後で少し腫れてて、それでも透き通るような鋭いけれど優しさを感じる目。ファインダー越しじゃなく、直接私を写している。
「袴似合っとるよ」
「えっと…」
「何かドキドキしてもうたやん」
彼は机に置いていた筒をそっと手に取る。取り出した証書はもう切ないものには見えなかった。
「これ持って一緒に撮らん？」
そして私もまた、筒からそれを取り出した。
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ぽぷら(プロフ) - なおさん» コメントありがとうございます！かなりお返しが遅れてしまってすみません💦楽しんでいただけたようで嬉しいです(^^)こちらこそありがとうございました！ (7月14日 1時) (
レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
なお(プロフ) - ラウ担です。ラウちゃんがほんとにラウちゃんらしくて、ずっとラウちゃんの声が脳内再生されていて幸せでした！素敵なお話をありがとうございます！ (5月6日 22時) (レス) id: 61924ce533 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2021年11月30日 23時
