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その時。
コーヒーを持っていない方の腕をグイッと掴まれた。ひんやりとした手の感覚がしたと思ったら
「……ごめん、冗談って言ったのに」
一瞬のことだった。何が起こったか分からなかった。呆然とする私の腕を離した佐久間はそれだけ言って去っていった。
彼の背中が遠ざかっていくのを呆然と見つめながら、私は手首に感じた冷たさともう一箇所に残る冷たさに混乱していた。
今、佐久間
……キス、したよね？
「あっ、すみません……」
改札前だから迷惑そうに人が私を避けていくのが見えて急いで自分もその改札を通った。
自分が乗る電車のホームに向かって自然と足は進んでいくけれど、頭の中は混乱と戸惑いで埋め尽くされている。向こうのホームに電車が通る風に体を震わせて、手に持っているもうぬるくなったコーヒーのカップを両手で握った。
なんで？佐久間……
〜♪
「亮平くん…？」
そのまま呆然と電車を待っているとポケットの携帯が震えて。画面を見ると彼からの電話がかかってきていた。
「もしもし…？」
『あ！もしもし？ごめんね、亮平です。さっきLINE送ったんだけど…返事ないから電話しちゃった』
「……あっ、そうだごめんね。返してなかった」
『今どこにいる？』
「あー……今異動前にいた本社の辺りにいて。今から帰るところでさ。そっち着くのだいぶ遅くなっちゃうから…」
『俺待ってる！駅にいるからさ』
亮平くんは私の声に被せるようにそう言った。
「いやそんな悪いよ…寒いし」
『ううん、俺が会いたいの。今日中にお礼が言いたい。誕生日のうちに』
今日中。そう、今日は彼の誕生日だ。
きっとあっちに着くのは23時過ぎとかそのくらい。ギリギリ今日。
「……あったかい所にいてね？本当にまだかかるから」
『うん、大丈夫』
ちょうどその時に電車がやってきた。その音が聞こえたのか彼は「気をつけて帰ってきてね！」って電話を切る。
もうほぼ冷たくなった残りのコーヒーをグイッと飲み干してゴミ箱に捨てた。そして電車に乗った私は力が抜けたようにクタッと端っこの席に座る。
「あ……お誕生日おめでとうって言うの忘れちゃった」
ポケットにしまった携帯を取り出す気力は無かった。お酒のせいか、瞼が重くて。
私はそのお酒と電車の揺れで引き起こされる眠気に縋るように、とりあえず一回忘れようと目を閉じて顔を下げた。
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ぽぷら(プロフ) - takkimakkiさん» コメントありがとうございます！お返しがかなり遅れてしまった事をお許しください💦大切に読んでくださったみたいで嬉しいです。Twitterの方も楽しんでいただけてるかな?お付き合いいただきありがとうございました！ (7月14日 1時) (
レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - 颯楓さん» いえいえ！とっても嬉しいです、ありがとうございます。そしてかなり遅れてのお返しになってしまいすみません💦とても感情移入しながら読んでいただいたんだなと思います、お付き合い頂きありがとうございました(^^) (7月14日 1時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - ちーさん» コメントありがとうございます！一年以上の時差でのお返しにになってしまったことをお許しください💦お付き合い頂きありがとうございました！ (7月14日 1時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
takkimakki(プロフ) - 初めて、ぽぷらさんのお話に出会えたのがこの作品でした。世界観に引き込まれて、桃色さんとのやり取りに苦しくなったり、緑色さんとのやり取りにギュンとしたり。とにかくステキでした。他の作品も読ませていただきます。Twitterもフォロリクさせていただきました！ (2023年1月9日 4時) (レス) id: ff744b84c3 (このIDを非表示/違反報告)
颯楓(プロフ) - 同じ日に別の作品にそれぞれコメントしてしまってすみません、あの、こちらの作品の世界観もよすぎてこの感動を伝えずにはいられませんでした,,,！桃さんとの間にけじめをつけるシーンがもう読んでいて泣きそうになってました,,,ありがとうございます！！！ (2022年3月23日 4時) (レス) @page48 id: 263fa867c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2021年11月27日 18時
