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「美味しかったぁ、次は別の方行こうね」
「う、うん。あの…いくらだった?」
「いーの。俺に出させて?」
帰ろうかって席を立った途端に伝票をひょいっと取ってそのままお会計をした亮平くん。慌てて財布を出そうとした時にはもう終わっていて、行こ?って外に出るもんだから追いかけたらこう。
やっぱ、ずるい。
「……ありがとう、ごちそうさま」
「いいえ」
優しくて、時にあざとくて、時に男らしい。
色々な方向でこの人はずるさを発揮してくる。
「寒くない?」
「……寒いかも。」
「寝てるからー笑」
「日中あったかかったんだもん。」
のんびり歩いていると身体が冷たくなっていくのを感じる。カーディガンじゃもうダメかな。亮平くんがコート着てたの見て何となく察してはいたけど、寒い。
「お家どの辺?」
「えっと…あそこ、スーパーの辺り」
「あー、あの辺ね。送るよ、寒いから急ご?」
亮平くんが足を踏み出したら私も前に進んだ。意図せずに脚が動いた。そのまま少し早いペースで進んでいく。
だって、彼が私の手を取ったから。
少しだけ前に見える彼の背中。繋がれた手が視界に入って寒いはずなのにそこだけ熱くなった気がした。自分の歩くスピードを少し上げて彼の隣に並ぶことはなぜかできなかった。心臓の音がうるさくて、そんなのできなかった。
彼は彼でただ私の手握って前を歩く。振り向かずに、でも引っ張ることはせず。
「りょ、亮平くん…‥この辺で、大丈夫」
「ん?おうち見える?」
「あ、あれ……」
自分のアパートが見えてきて、その建物を指差すとそこに歩き出す彼。結局その前に着くまで彼は私の手を離さなかった。
「手冷たいからあったかくするんだよ?」
「うん…」
「じゃあね、またご飯いこう」
そして手を振ってから去っていった。
優しい笑顔を見せながら。
「むりぃぃ………」
部屋に入った途端、何だか色々なものがぷしゅーと抜けたように私はへなへなと座り込んだ。
こんなことされたらこっちだって勘違いする。てかもうしてる。いや勘違いっていうかさ……
「……好きになっちゃった…かも」
何となく、何となくだけど気になっていた自分はいた。
でも気づかないふりをしてた。
だけどもう認めざるを得なかった。
亮平くんのずるさに
私はまんまと落ちたのだ。
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ぽぷら(プロフ) - お風呂場の狸さん» いつもコメントありがとうございます!また泣かせちゃった…(笑)お楽しみいただけたようで嬉しいです。寒くなってきてお仕事だとか、朝起きるのも億劫な季節ですよね。お互いに頑張りましょうね( ; ; )こちらこそありがとうございます! (2021年12月19日 16時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
お風呂場の狸(プロフ) - めちゃめちゃ泣きながら読んでいま全てを踏まえて読み返してます……ほんとに天才です最高です……今日も6時半起きで仕事なのに一気読みしちゃいました……!今週一週間も頑張れそう(;-;)とても面白かったです!ありがとうごさいます!!! (2021年12月13日 2時) (レス) @page17 id: 0d3b8981e3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - aggyさん» お読みいただきありがとうございます!どうなるんですかねにやにや(笑)駆け足になりますが彼らを見届けてくださいね!コメントありがとうございます(^^) (2021年11月29日 1時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
aggy(プロフ) - コメント失礼致します!いつもお話拝見させて頂いてます。今回のお話、読んでてニヤニヤしちゃいます笑笑今後の展開楽しみにしてます! (2021年11月27日 20時) (レス) @page50 id: 4fbf4fb7f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2021年11月26日 11時