・ ページ10
・
「でも、俺っていう前例があるしここの人たちは理解がある。それにどうせならその能力活かしたいと思わない？」
「活かす…？」
阿部さんは今度は真剣な顔で、真っすぐと私を見つめた。
「うん。探偵ってさ、いわば人から依頼を受けて何かを調べたり謎を解決したりするわけ。例えば昨日みたいに行方を追っている人の心の声が聞こえたら、こちらが声を出さずしてその人を捕まえられたりとかさ。この仕事は心の声が読めるっていうのが役立つよ？俺が言ってるから間違いないよ」
その言葉はなぜか彼の目線のように真っすぐと自分の中に落とし込まれる。
昔からこの謎の能力に対してマイナスな事しか思ってなくて。当たり前だけど人間って心の中では正直だから、聞きたくないようなこともたくさん聞こえてしまう。
心の声が聞こえるなんてことを周りに言ったら気味悪がられるし、大体信じてもらえない。もちろん便利な事もあったけど、どっちかというと嫌な事の方が多いから。
それを活かすだなんて、考えてなかったから。活かせることなんてできるの？って。半ばその言葉に縋り始めてる自分がいたのかもしれない。
(もう大丈夫だから。一人で抱える必要ないよ)
目の前の阿部さんが心で話しかけてくる。
そっか…ここの人たちは分かってくれてるんだ。阿部さんはこの気持ちを分かってくれてるのかな。
「よし、じゃあ早速今日からこの探偵事務所の一員ね？」
「えぇ？強行突破？」
「心で入るって言ってたもん」
「あ、なるほど」
そんな気持ちになっていた私の目の前でいつの間にか話は進んでしまっていた。
心でも入るなんて一言も言ってはいないんだけど。
ニコニコしている阿部さんはいくつか書類を出してここにサインとー、とか言ってる。あ、もうこれ入る流れ…？と先ほどまでの気持ちよりも焦りが大きくなっていく。
「……よろしくお願いします」
「よろしくね。入社おめでとう！」
でも焦りからか逆にどうすればいいのか分からなくなって、つい流されてしまった私がハッとした時にはもう遅かった。
ニコっと笑った阿部さんと一人拍手をしているいい声の人。佐久間さんも聞かされてなかった割に受け入れるのが早いみたいでこれまたニコニコしている。
どうやら引き下がれないようだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2155人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽぷら(プロフ) - onceさん» お読みいただき、そして温かい応援のメッセージありがとうございます(^^)頑張ります！ (2021年8月2日 15時) (
レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
once - すごく面白いです！これからも頑張ってください！ (2021年7月31日 14時) (レス) id: d9ffc008c9 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - はちの玉雪さん» ただいま帰りました！！笑 いやーお待たせいたしました。7人の探偵さん達をどうぞよろしくお願いします。笑 (2021年7月23日 13時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - みーさん» お読みいただきありがとうございます！！さぁ、それが今後どうなっていくのか…笑 私もどうなるのか分かりません！笑 (2021年7月23日 13時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
はちの玉雪(プロフ) - おかえりなさいませ、「キミを持っている」の心境でお待ちしておりました(笑) これからの展開を、楽しみにしております。 (2021年7月22日 20時) (レス) id: ef0b5894b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽぷら
| 作成日時：2021年7月13日 22時
