甘い一瞬に騙されて

ここ、私の特等席ですが？ ページ29

今日も教室の至る所で集う女子たち。
なんで集まる、なんで一緒に行動する。

かくいう私も女子なのですが。

｢A〜、みんなでお揃いのもの買おうって話になったんだけどいつ空いてる〜？｣

クラスで仲良いグループの1人が声をかけてくる。

｢そうなんだ！どうしよ、予定出てから連絡してもいい？｣
｢いいよ〜！A何かと忙しいもんね！
また教えて〜！｣

ひらひら、と手を振りながらもとの集まりに戻っていく彼女。

私も表面上うまくやっていってる、つもり。
唯一同じクラスの斎藤にだけは｢ロンリーウルフ｣なんて呼ばれてるけどお前も十分ロンリーウルフだよ。

ある程クラスの子達と話した後に屋上への向かう。
ずっと教室に居ると息が詰まってしんどくなってしまうから、何かあればここに逃げてくるのが習慣だった。

みんなが憧れる屋上のように綺麗な所じゃないけど、私にとったらこの学校で唯一のエデンだ。


｢何かとお揃いとか、どこかに連れ添って行かないといけない習慣なんとかならんのか……。

あと高校生活2年もやってられる自信ねーわ。｣

ザッ、と背後から足音がして振り返る。

そこには身長の高くて前髪の長い男子生徒が立っていた。

(げ、今の聞いてた？)

あんまり聞こえのいい言葉を吐いたつもりがなかったからちょっとマズいと思ったけど、相手を認識して大丈夫だ、と確信した。

隣のクラスの田淵智也だ。

斎藤曰く、その辺で聞いたことをぺらぺら喋るヤツじゃないし、交友関係も狭く深くの感性らしい。

｢Aさん、だよね。｣

｢え、なんで知ってるの？｣

私は田淵のことを斎藤から聞いていて知っているけど、よく思えば1年の時も2年になってからも1度も喋ったことがない。

｢斎藤くんと仲良いよね。
ロンリーウルフAって呼ばれてて。｣

あいつかー斎藤かー。
あいつ何他所でロンリーウルフAとか呼んでくれちゃってんだよ。
お前こそよっぽどロンリーウルフ斎藤だろうが。


｢あ、勘違いしないで欲しいけど、斎藤くんは誰彼構わずぺらぺら話す人じゃないから。｣

あ、斎藤と同じこと言ってる。

よっぽど仲良いんだな、って思ったけど｢田淵が最近絡みに来ててウザイ｣って言ってたの思い出してよく分からなくなった。

｢……Aさんってさ、賢いよね。｣

当然思わぬ言葉をかけられ、びっくりした。
さすがにこんな言葉をかけられるほど斎藤が田淵に喋ってるとは思えないし、多分あいつは私のこと賢いと言わない。

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