無色の枷 (ページ16)

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──────……

あれから午後。
Aはソファに寝そべりながら影汰と漫画を読んでいた。
きっかけは彼女が暇だと言ったことだ。
暇潰しの娯楽に…と、彼は部屋にあるオススメの漫画をいくつか用意して今に至る。

「…………」

「…………」

「………ｯｸﾞｽ…」

「え…？」

突然、漫画を読んでいたはずのAから涙ぐむ声が聞こえてきて、思わず影汰は彼女を見る。

「…ｸﾞｽｯ……」

「え？…ちょ、ちょっと…泣いてるの？」

「うぅ…何で……何でヒロインの子…………ここで死んじゃうの……ｯ！？」

「え！？」

思いもよらなかった言葉に、影汰は目を丸くする。
てっきり誘拐への恐怖心がここにきて溢れ出したのかと思ったが、どうやら漫画に対する悲しさだったようだ。

「ずっと…ずっとこの子、主人公のこと想い続けてたのに……報われないし…………ひどい」

「あ、あー……そこか。…そこは僕も辛かった」

「あんまりだよね！？…主人公も死ぬ間際に気持ちに気付くとか、遅すぎるよ…」

「まぁね…でもその漫画、この後もツラい展開結構待ち受けてるから…」

「これ以上まだあるの！？うわぁ、読みたくない……」

って言っても読むけど…なんて呟きながら漫画を見つめるAを見て、影汰は彼女に問いかける。

「…意外。君って案外漫画読むんだね」

「え、めっちゃ読むよ？王道少年漫画とか特に好きで、家に単行本もたくさん買ってあるし」

「そうなの！？…う、嬉しい。僕も漫画好きだから、同じだね。……あ、ちなみにゲームとかは？」

「ゲームもするよ。話題のゲームは基本買ってるし、ソシャゲも割とやり込んでた。…まぁ、スマホは誰かさんにパクられてもうできないんですけどね」

「ア…ハハ……それは、ごめん……。でも、ゲーム機なら家にあるよ！ソフトも君がやったことありそうなメジャーなものから、マイナーなものまで！…それ読み終わったらやる？」

「本当？やりたい！じゃあ、あと一巻だから待ってて。鬱展開と戦いながら読むから…」

影汰はその様子に思わず笑った。
この瞬間、Aは誘拐犯と被害者の枠を越えた気になっていた。
でも忘れてはいけない…自分達は友達でも恋人同士でも決してないのだ。

彼女の足枷の鎖は、その関係を意識させるかのようにジャラリと音を立てた。