無色の枷 (ページ13)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:18,816 hit

xiii ページ13

──────……

「な、何で……一緒に入らないの？」

「入らんわ」

「僕たち恋人同士なのに…？」

「まだ言うかそれ。あのさ、私が好きにならない限り手は出さないんじゃなかったの？」

「出さないけど…お風呂くらい…」

「裸見られるのも許されるわけないでしょ。一人で入らせて」

「…そんなァ……」

影汰は落ち込むと、Aからそっと手を離し洗面所へ押しやった。

「ハァ……わかったよ。じゃあそのレジ袋の中身、使っていいから。タオルはその棚の上ね」

「レジ袋…？これなに？」

「君の歯ブラシや替えの下着。あとメイク落とすやつとか。朝コンビニで買ってきた」

「え！？」

Aは驚いて袋の中を漁る。
中には影汰の言った物が全て入っていた。
思ったよりも気が利く…なんて心を緩めそうになりながらも、彼女はあることに気が付く。

「待って。……朝、コンビニ行ってたの？」

「え？…うん」

「家の近くに…コンビニあるの？」

「近くではないけど。車少し走らせたら…」

Aは少し考える。
車を使わなきゃいけない距離なら、やはりそこに助けを求めるのは厳しいか…。
だが、彼が出かけている隙に何かしらは出来るかもしれない…。

その様子を察してか、影汰は彼女に問いかける。

「…もしかして今、逃げる作戦でも考えてる？」

「へっ！？…い、いや、そういうわけじゃ」

「僕が出かけている間は自由だとか考えない方がいいよ。部屋中に仕掛けた監視カメラで君のことはいつでもチェックしてるし、下手なことしたら檻にでも入れるつもりだから」

「か、監視カメラ…！？」

その瞬間、Aは怖くなり周りを見渡す。
だが素人目線では全然見つけられず、それがさらに彼女の恐怖心を加速させていく。

「ま、待って…！それってトイレやお風呂にもあるの！？」

「ううん。カメラは夜中に仕掛けたんだ。君の昨日の話を聞いて、トイレやお風呂は嫌がると思って付けなかった」

「そ、そうなんだ……」

Aは恥ずかしい姿を見られない安心と、トイレでの怪しい動きがバレていない安心で心から安堵した。

「それでも一緒に入ってくれるかな…とは期待してたんだけどね……まぁいいよ。…あ、でも怪しい動きしたらすぐにドア開けるから。不自然なほど長かったり、シャワー音以外の怪しい音とかしたら…」

「わ、わかったよ……」