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9話 ページ10

「くびがすーすーします」

「見てくださいこのタコの残骸のようなものを」

ぴ、とジェイドが床を指さした。
フロイドに離せと告げて下ろしてもらい、
床を見るとあらどうしたことか。

確か腰まであったから、
50センチ?もっとだろうか。盛りすぎ?

分からないけれどもとにかく
なかなか見られないほどの
断髪であったのだろう残骸が広がっていた。

……というかタコを例えにするな。


はっきり言って
ジェイドの切り方は慣れたものだった。
初めに入れたハサミはとりあえず
肩ほどまでの長さに切っただけで、
その後フロイドに抱えられて
洗面台で頭をビシャビシャにされた。

どこから取り出したのか
歯の細かい櫛で私の髪を意外と丁寧に梳いて
思ったより慎重に丁寧にハサミを使ってくれた。

その代わり
床がビシャビシャなわけだけれども。

……これ、掃除してくださいますよね?ね?

「!
大したものですね」

「アズール、パイセン」

「パイセンではありません」

途中会議がとか言って出ていった
アズールが戻ってきた。

寮長の癖に壊れた扉に茫然自失せずに
当たり前のような顔をして入室する姿に、
見知った顔の1年生がビビっていた。
まぁそうだよね。

「なんというかなんというか。
これジェイドの趣味?」

前髪は目の下辺りで切りそろえられ
(当然乾かしてくれた)
今はセンターパートにしっかり分けられている。
あぁ当然あの頑固なアホ毛も短くなっていた。
あるけど。

オンナノコのような丸い髪型ではなく、
少し大人っぽい大きく段の入ったショートカット。
中性的見た目の多いこの学園でなら、
浮かない程度の髪型だった。

「いーじゃんいーじゃん
ちょっとはマシー」

「貴方の細かい注文に答えた結果ですよ、
フロイド」

「うん、オレ好き〜」

ちょっと待て
お前ら断髪中一言でも喋ってたか?

なんてツッコミはしてはならない。
こいつらはこんな感じだ。基本的に。

「ではAさん。これを」

ずい、と差し出されたのは
見るからに怪しげな薬品の入った子瓶。

「えぇ?」

「その足の傷を治す薬です。
あなたその足じゃ移動もままならないでしょう」

眼鏡を押し上げつつも
アズールの視線は私の足に向いていた。

部屋着なのでショートパンツから除く足は、
まぁ言ってみれば青アザまみれである。

「…………要らないです」

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作者名:よく骨を折る田中 | 作成日時:2020年6月30日 22時

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