8話 ページ9
「僕たちも
そこまでは考えていなかったのですが」
「カジキちゃんメスなの隠す気ないもんねぇ〜」
「あ゛っ」
別に低いわけじゃない身長と、
女にしては少し低めの声音。
それを加味しても、
一人称は私、長い髪、
男とは言い張れない体つき。
「せめて一人称を僕にしておくとか、
なにかなかったんですかあなた。」
「いやいやいやいや
ちゃんと理解してるんならなんか助言とか！」
私が女なことは完全スルーだったじゃん！！！
「このままではいずれ
貴方の性別もバレてしまうでしょう
その前に髪を短くして
一人称を変えればいいのでは。と。」
「ついでにその変色する色素も調べられますしね」
「そっちが本音だろアズール！」
別に髪なんて、
同じメスの人魚さん達が伸ばし始めて、
特にロングでもショートでもこだわりはなかったし
切らなくていいのならそれはそれでと
雑に伸ばし続けてきただけなわけで。
「はぁまぁ切るのはいいんですけど。」
誰が切るんですか？？？
アズール？
この人意外とテンパるタイプだし緊張しいだし
フロイド？
え？論外。
ジェイド？
………………まともそうなのは否めないけども！
すっっっっごく信用出来ない。
「オレとお揃いにしよーよカジキちゃん
オレたちお互いの髪切ってるし」
「お二人の間に割って入るなんて到底私には荷が重いことでございますハイ」
てか自分らで切ってんのか！
器用か！
「僕が切りましょうか？」
「ジェイド……センパイ」
「その取ってつけたような敬称は結構です。
フロイドは勿論……
アズールに頼んで契約したくはないでしょう？」
「いや美容院に行きたいですよね普通に」
当然だよね。
年頃のオンナノコである私が、
ひとつ上のあまり得意ではないセンパイに、
髪を切ってもらおう！
なんて正気の沙汰ではない。
というか当然のように
ハサミを持ってこないで欲しい。
「フロイド」
「おっけぇーい。
ジェイド、あんまり短くしないでよ
カジキちゃん一応メスだし」
「わかっていますよ」
おい待てコラ一応ってなんだあぁん？
と言おうとした瞬間にフロイドに抱え直され、
迷わず髪の毛が床に落ちた。
「すっっっっっげぇ迷わずハサミ入れるね？」
「こういうのは思い切りが大切です。」
「信用出来ないんだけど！！！！」
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作者名：よく骨を折る田中 | 作成日時：2020年6月30日 22時
