16話 ページ17
「つーかちょっとまて」
私が意気消沈していると
上からライオン先輩の声がした。
「お前さっきどうやって俺のとこまで来た？」
「え？そんなん……
そんなん……はし、って？」
「えっ？！えっ？！た、たしかに、
レオナさんのとこに行く時、走って……た？？」
全員それどころじゃなくて記憶が定かではない。
私なんて無我夢中だったし、
ほか2人もしかりだ。
「ちょっと立て！」
脇の下に手のひらが差し込まれ、
ひょいと地面に立たされる。
……最近なんかこう言う場面多いな……
ひょいひょいひょいひょい持ち上げやがって……！！
「いいか、走れ」
「アドバイスは？！」
安定の無茶ぶりに私が叫ぶ。
「レオナさんもう1回
悲しそうな顔して
歩いたらいいんじゃないっすか？？」
シシシッ！とラギー先輩。
あんた殺されるぞ？？
「はしれ。」
「っ、はい！！！」
有無を言わせぬ威圧に
私の背筋がしゃんと伸びた。
さっきはどうやって走ったっけ。
ライオン先輩に追いつきたい一心で。
腕を振って地を蹴って。
「やれば出来るじゃないっすか！！！」
遠くの方でラギー先輩の声がした。
ぎゅっとつぶっていた目を開くと、
流れるように(以前と比べて)
景色が飛んでいく。
自分が早いか遅いかは置いておいて、
とりあえずまともに走れているような気がした。
楽しくなって全力で2人のところに戻る。
「はぁ、はぁ、は、
わたし！走れました！！？」
「……っ、進歩したっすね……！！！」
「まぁ見れるようにはなったな」
「あ、意外と辛辣。
微妙でしたか」
笑いこらえ気味のラギー先輩と、
変わらず半目のライオン先輩。
……でも、とりあえず、
走る という目標はクリアしたわけで。
「っ、ラギー先輩！ライオン先輩！
ありがとうございました！！」
ほんとに走れるようになるなんて！！
と叫ぶと淡く微笑んでくれた。
「でも寂しいです……
入学してからずっと走る練習してたし」
「それだけ聞くとほんとに5歳児っすよね」
「黙っててください。」
「別にいいだろ、
また学園内で会える。
用があるならサバナクロー寮に来い。
お前ならいつでも歓迎だ」
ふわ、と笑うライオン先輩。
おぉそんな顔もできるんですね？！
そうかなるほどツンデレってこれか？！
ぎゃんかわ！！！
「じゃあとりあえず。」
私はそう言ってにっこり笑う。
「「？」」
キョトンとする2人を見て。
「耳触らせてください！！」
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作者名：よく骨を折る田中 | 作成日時：2020年6月30日 22時
