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初めて会ったのはドラマの撮影の日。
前の仕事が押しちゃって少し遅れて現場入りした私に優しく話しかけてくれたお兄さん。
ドラマでは、ちょっとぎこちないカップルの役で
そのためか、休憩中もちょっとしか喋れなかったなぁ…
自分はもっと色んな人と話せる人間だと思い込んでいた。
私が彼と仲良くなったきっかけはドラマの撮影も終わった後、打ち上げのとき。
『お疲れ様でした』
主役の彼の周りは人がいっぱいで、やっとの思いで話しかけられたのはお開きになって外に出てからだった。
丸「あ、お疲れ様でした…
楽しめた?あんまり飲んでなかったみたいやけど…?」
『今お酒控えてるんですよ。でも楽しかったです。
撮影も、打ち上げも。』
酔っているのか、顔が赤くていつもと違う彼はタクシー待ちだという。
丸「Aさんはおうちどっちの方?」
『最近引っ越して、今はあっちの方です』
指をさせば丸山さんもつられてそちらを見る。
丸「俺もあっちの方やわ、案外近かったりすんのかな?」
『どうでしょう?』
丸「Aさんもタクシー待ち?」
『はい、歩いて帰るにはちょっと遠いので』
丸「そっか…じゃあ一緒のタクシー乗ろ?同じ方向やねんしさ」
『あ、いいですね』
突然のお誘いに何となく了承する。
スタッフさんが1本向こうの道の方にタクシーを呼んでしまったみたいで、何人かで固まって移動中、
丸「そういえば、僕ずっとAさんって呼んでるけど、なんて呼んだらいい?」
と、話題を振ってくれる丸山さんに
『最近は苗字で呼ばれること多いですけど、子役の時からのくせでって名前呼びされる方もいますよ?』
なんて固い言葉で返してしまう。
丸「じゃあ僕もAちゃんって呼ぼ」
やっぱり彼は酔っているらしい。
ふわふわ可愛らしい笑顔を私に向け、丸山さんは
「僕のことも隆平って呼んでな」
なんて言う。
今まででいちばんお話した夜。
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作者名:ゆうか | 作成日時:2020年5月30日 0時