全力少女2 (ページ15)

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愛しい人黄ページ15

鍵盤に触れた瞬間、ホール中に響き渡るパイプオルガンの音

彼女の綺麗な指先から奏でられるその音は圧巻やった

さすが音楽家の娘、いや、音楽に愛されてるヤツやな

大倉「なんか、あれやな……琴やんどっかに消えてしまいそうや」

大倉がボソッと呟いたのを聞いて、もう一度Aを見た

でっかいオルガンに向かってるAはどこか寂しそうで

そのままやと音に、音楽に飲み込まれてしまいそう

そう思ったら体は勝手に動いてて

渋谷「亮、！」

気づいた時にはAの後ろに立って、彼女を抱きしめとった

俺にビックリしたんか、Aは演奏を止めて

『りょーちゃん、』

と、小さく呟く

俺の腕に自分の手を重ねてトン、トンと規則正しく叩いた

『亮ちゃん』

錦戸「A、」

『ん？』

錦戸「帰っておいで」

その言葉に一瞬息を呑んだ彼女は、溜め息交じりで小さく笑って

ゆっくりと俺の方を向くと

『…ただいま』

と、ふにゃりと微笑んだ

俺はこの顔が好きや

錦戸「おかえり」

『よく分かったね、入り込んでるって』

Aは音楽に没頭する癖がある

酷い時にはご飯も食わんと音を奏でる時もあった

多分、これを知っとんのは、すばるくんと章ちゃんと俺くらい

錦戸「誰やと思ってんねん」

『私の大切な大切な錦戸亮様』

ちゃうよ…

お前を狂うぐらいに愛しとる臆病な男やで