第三十四夜 退屈なじかん ページ36
「退屈だわ……」
「だねー」
この世界に来るのが当たり前のようになった日々。ついに、こっちへ来ても、皆が必ずいるとは限らなくなってしまった。
「せっかく来たっていうのに……どうしてシャルナークしかいないのっ」
Aったら拗ねてる、と笑われるがこちらとしては本当に笑えない。
いつか突然、こっちに来られなくなることがあるかも知れないのに。それが、明日かも知れない。いつまでこんな日々が続くかなんて保証、本当はどこにもない。
「みんな今はちょっと色々と忙しいのさ。団長がすごく目ぼしいものを見つけたらしくてね」
シャルナークは、幾つかの書類を束にして、机の上でトントンとならす。このアジトにも、もう随分と長くいるが、この部屋の汚さときたらない。
「昨日は私、ここを掃除したんだけどな……」
「今朝、ウヴォーが飲み過ぎで暴れて、部屋中ごちゃごちゃになったからねえ。全く、片付けるこっちの身にもなってほしいよ」
ため息をつくシャルナークに、私は舌を突きだしてみせる。
「それは私の台詞ですよーだ」
この旅団、男性率が高いせいか、部屋はいつも荒れている。団長は一見きれい好きに見えるが、自分の部屋でなければ別に散らかっていようが気にしないらしい。
『ここはあくまで蜘蛛のアジトだ。オレの部屋じゃない』
何をカッコつけてんだ、と思う。本音はきっと、片付けても片付けても皆に散らかされるので、ついに心が折れてしまった、というところだろう。
前に散らかりすぎていたせいか肘が当たり、自分で自分の本にオレンジジュースこぼして嘆き悲しんでた癖に。
『やはり、早めに手を打つべきだ……』
あの時の落ち込むクロロの顔ほど、滑稽なものはないだろう。
「ところで、目ぼしいものって?」
お宝?、と私が問うとシャルナークは笑う。
「Aって、オレたちが盗むものといえば、お宝としか言わないよね」
「だってそんなものしか浮かばないもの」
「今回はもっとすごいよ。高値で取り引きされるレベルの代物じゃない。恐らく、手にできるのはオレたちぐらいかも知れないな」
「そんなにすごいものなの……」
まるで幼い子供の内緒話みたいに。ひそひそと小声で近付き、シャルナークは言った。
「ねえ、一体なんなの?」
「Aに教えていいものなのかなぁ、これ……」
「なによ、言えないことなの?」
「いや。でも、言っていいとも言われていないな」
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作者名:アユミ | 作成日時:2018年11月15日 0時