【QK】煙草と珈琲と君【ymmt】

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Side You


昔から勉強が好きじゃなかった。
できないわけじゃないけど、目的もなく永遠にやり続けるのは嫌だった。

料理は昔から好きだった。とりあえずと進んだ高校卒業後、好きなものなら、と料理の勉強をしたくて専門に進学して、そのまま飲食店の小さな会社に就職した。

今は満足してる。好きな料理もたくさんできるし、まさか喫茶店で働くとは思わなかったけど、このために勉強したコーヒーも味や香りの違いを知れば知るほどのめり込んだ。じっくりコーヒーを淹れてる時間はなんだか心も落ちつく。
人と話すのも好きだし、アルバイトの学生とも歳が近いからかよく慕ってくれるし、まあ、年上の部下ができるのはなかなかやりづらいけど、それも人生経験。

さて、そんなわけで、机に向かってやれ数学だの英語だの歴史だの、そういうザ・勉強はどうしてもできなかった私にとって、最高峰東京大学や他にも名の知れた大学へ通ってその知識で生きている彼らは、憧れであり尊敬していた。何気なくみた動画から、この人たちは自分とは違う人たちなんだと思うと、その存在自体に興味が湧いて、どんどんはまってしまって。

…山本さんって理系で漢字強くて運動もできるって何事？おまけに字も綺麗。笑顔も真剣な顔も幼稚園児の声も問読みの声も、まあ要するに魅力でしかないわけですよ。あの人たちのファンであり、山本さんのファンでもあった私に奇跡というのは起こるんですね。

働いていた会社の喫茶店が2店舗目をオープンすることになり、そこのマネージャーとして配属されることになった。マネージャーと言っても、店長がこの2店舗を掛け持ちしつつ、実質こっちは私が仕切ることになった。

そしてオープンしてからやっと落ち着いたころ。
お客さんを見送ってドアが閉まった瞬間にまたそのドアが開いた。


「…いらっしゃいませ、おひとりですか？」

「あ、はい」

「空いているお好きなお席へどうぞ。お冷とメニューお持ちします」


きょろきょろと店内の様子を伺うように入ってきた小柄の男性と目があった瞬間、心臓が止まるかと思ったのにすぐに仕事モードに切り替えられたのは褒めてほしい。
もう頭の中は疑問でいっぱいよ、なんでここに？どうして？え？みたいな。とはいってもファンです！っていったら困らせちゃうかもしれないし、いわゆるプライベートの時間だったら迷惑だろうし、と散々考えて普通の接客を心掛ける。

あの笑顔を目の前で見れただけで幸せです。

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