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Side Ymmt
「山本、コンビニ行くの?」
「はい、なんかいりますか?」
「んや、一緒に行く」
お昼時のオフィス、財布だけ持って立ちあがると、伊沢さんに声をかけられた。珍しいな、と思いつつ、一緒に歩き出す。すっかり夏の日差しになってきた。暑いですね、ほんとにね、アイス食べませんか、なんて適当に会話をしながら吸い込まれるように冷房の効いたその店舗に入る。
適当に菓子パンと飲み物を手に取り、レジに並ぶ。…煙草なくなりそうだったな、買っておこう。Aちゃんってなんの煙草吸ってるんだろう、そういえばちゃんと聞いたことないかも。ぼんやり考えるのはやっぱり彼女のこと。
…僕も会いたいんだよ。
「山本、吸う?」
僕が煙草を買ったのを見たのか、伊沢さんにそんなことを聞かれる。彼の手にも、今さっき買ったらしいその長方形の箱があった。あまり会社では吸うつもりはなかったけど、こんなお誘いをされては断る理由もない。
ふたりで出入り口横にならんで火を点ける。
「吸うようになったんですか?」
「こないだ一緒に吸ったら懐かしくなって最近吸ってんの」
「えぇ、なんかすみません」
「いや別にいいんだけどさ」
くすりと笑って、灰を落とす伊沢さん。
山本はさ、と地面を見つめたまま切り出した。
「なんでそんな急に煙草吸いだしたの」
「…好きな人が吸ってるんですよ。その人と共通点持ちたくて」
別に隠すことでもないし、Aちゃんと伊沢さんが会うこともないし、煙を吐き出して一言答えると、伊沢さんは驚いたように瞳を見開いてこちらを見ていた。
やがてふっと笑う。
「よかったよ」
「…ありがとうございます」
ちゃんと話したことは無いけれど、彼も僕の過去の恋愛には気づいていたらしい。
うん、もう大丈夫です。
「んで?その人とは?」
「へへ、いま仲良しなんです」
「いつの間に。全然知らなかった」
「伊沢さんが知らない人ですからね」
「そーなの。なんかあったら教えてよ」
伊沢さんはそれ以上深堀してこなかった。
ありがたいような、話を聞いてほしいような不思議な気持ち。
まあ、いいか。
いつかちゃんと結論が出たら、お祝いしてもらうか慰めてもらうかしてもらおう。
スマホが震えた。画面を見ると件の彼女。
『今日は早く帰ってきた。サボり』
いたずらっぽく笑う彼女が目に浮かんで、僕も頬が緩んだ。
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黄色い恐竜(プロフ) - 早瀬さん» コメントありがとうございます!私も書くことが自粛期間中の楽しみだったので、そう言っていただけて嬉しいです…!次回もよければぜひよろしくお願いいたします! (2020年6月15日 14時) (レス) id: f5683b3f6a (このIDを非表示/違反報告)
黄色い恐竜(プロフ) - ぺりさん» コメントありがとうございます!私も大好きな二人をそう言っていただけて嬉しいです…次回はまた雰囲気が変わるかと思いますが、よければぜひよろしくお願いします! (2020年6月15日 14時) (レス) id: f5683b3f6a (このIDを非表示/違反報告)
黄色い恐竜(プロフ) - 孤黒さん» コメントありがとうございます!日常的な幸せって素敵ですよね…そう言っていただけて本当にうれしいです!ぜひこれからもよろしくお願いします! (2020年6月15日 14時) (レス) id: f5683b3f6a (このIDを非表示/違反報告)
早瀬 - 完結おめでとうございます!コロナで外に出れない憂鬱なこの日々の楽しみがこのお話でした!とってもとっても素敵でした…!!山本さんを幸せにしてくれてありがとうございます笑これからも素敵な物語を楽しみにしています! (2020年6月14日 23時) (レス) id: 0963beb20e (このIDを非表示/違反報告)
ぺり(プロフ) - はじめまして!完結おめでとうございます!陰ながらずっと更新を楽しみにしておりました。山本さんが報われてよかったし、本当に好きな2人でした。次回も楽しみにしております! (2020年6月14日 22時) (レス) id: aef7fed343 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黄色い恐竜 | 作成日時:2020年5月21日 21時