【QK】煙草と珈琲と君【ymmt】

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Side You


あんな奇跡みたいな日からしばらく。
普段なら休みだろうと店に出向いていたけれど、その日はどうしても起き上がれず、おとなしくベッドの上でごろごろと転がっては、最近見れていなかった動画を見漁っていた。…あ、この動画の山本さん、あの日の服じゃない？あの日撮ったやつかな。そうだったらなんか嬉しいな。

何をするのも面倒で食事もおろそかにしていた午後。

『Aさんおつかれさまです、すみません体調を崩して18時からの出勤厳しいです…』

休もうと思っても休めないんだから、この仕事は。バイトがあけた穴埋めるのは私。またこれか。連絡をくれたのは普段真面目に働いてくれている子だから、体調を崩したのも本当だろう。体調管理も自分の仕事だなんて怒るわけにもいかない。

『連絡ありがとう、了解です。お大事に。明日以降厳しかったらまた連絡ください』

18時か。
時計を見て、そして脳内で今日のシフトを思い起こす。
…一人欠員でたけど頑張って、とは言えないメンバーであり、ため息をついて体を起こした。

別に彼氏はほしいとは思わないけど、こんだけ仕事頑張ってる私を誰か褒めてくれてもよくない？
そろそろ私も嫌になるよ、なんて誰にも言えない文句を小さくこぼす。煙草吸ってから行こ。



「あれ！Aさん！今日お休みじゃなかったんですかー？！」

「声がでかい。欠員の連絡あったでしょ、代打です」

「あー！そうですね！どうするんだろうと思ってました」

「私が出るから時間通り上がっていいよ」


真面目に働いてくれてはいるけど、たまに声のボリューム調整が下手なバイトの子とそんな会話をしながらバックヤードへ向かい着替える。ついでに、とそのままメールチェックをしていると、またその子が顔を出した。


「AさんAさん！」

「なに、どしたの」

「あのお客さん来てますよ！」

「え？」

「あのちっちゃい男の人」

「…あぁ」

「あのお客さん絶対Aさんのことお気に入りですよね〜」

「はいはい、表戻って」


誰よりも楽しそうにそう言うだけ言っては戻って行く。
適当にあしらいはしたものの、周りからもそういわれていると思うと悪い気はしない。山本さん、今日も来てくれているんだ。あの日からタイミングが合わず会えていなかった。

また少しお話できたらいいな。

いつもよりちょっとだけ前髪を気にして、リップを塗りなおしてタイムカードを切りに行く。

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