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「よし、Aやな!
年齢…は聞かん方がええんやってサムが言うとったな。
ほんなら好きな食べ物は何や?最近の悩みは!」
そんなわたしには気づく様子もなく、宮選手はハイテンションに続けた。
『え、ちょ、ちょっと待ってください。
何ですか、これ』
「Aが言うたんやろ。
何も知らんから付き合われへんって」
ハイテンションはどこへやら。
さっきも見た真剣な瞳に、その真剣さに言葉が詰まった。
確かに言った。
でもそれは、知れば付き合える、という意味ではなかった。
言ったことは嘘ではないけれど、それをクリアすればいいって話ではない。体よく断るための言葉というか。
それを説明しようと思うのに、どうしてか何も言えなかった。
でも別に、気持ちが動いたわけではなかった。
宮選手は遠い存在であるべきだって心から思っていたし、わたしに執着する理由も分からなかったし、何よりも大事なこと。
彼はわたしのタイプじゃない。
「てなわけで、まずは連絡先、教えてくれへん?」
『……それは、ちょっと』
「チッ、あかんか」
黙ったわたしを、上手く丸め込もうとしていたらしい。
思いっきり舌打ちが聞こえたし、その後には、流されへんのか、と呟きも漏れていた。
呆れるほど、素直な人。
アリーナ裏の冷えた廊下での、数分の出来事。
笑っちゃうくらい、何一つ気持ちは動かなかった。
それでも、手だけはよく覚えていた。
「ほな、握手やったらええやろ」
『握手?』
「お近づきのシルシ、定番は握手やろ」
連絡先を断った後、宮選手が言い出したのはまさかの握手だった。
「この俺と握手なんて、ほんまやったら飛び跳ねて喜ぶもんなんやで!?」
『多分、10分前のわたしなら飛び跳ねて喜んでました』
お近づきのシルシが握手なのは、何も理解ができなかったけれど、連絡先を教えるよりは何倍もいい。
それなら、と承諾した。
差し出された手に、自分の手をそっと重ねるのは、ミーハー心が疼いたのか緊張した。
「……手、ちっさいな」
『宮選手は、おっきいですね』
「まぁな。バレーボール、掴めんで」
大きくて、節くれだった、男の人の手だった。
爪の先まで丁寧に手入れがされている、大きな手。
この人はコートの中で、この手で何度もボールに触れて、この手で何度もチームメイトを支えていた。
名残惜しそうに手を離す宮選手を見ながら、そんなことを考えていた。
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さな(プロフ) - ラブリーハートのプリキュアさん» ラブリーハートのプリキュアさん、ありがとうございます!身に余るお言葉、、嬉しいです😂侑くんらしさを出せるよう頑張ります!ぜひよろしくお願いします! (2023年3月6日 19時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
ラブリーハートのプリキュア - 初めの文から好きです。なんかもうあの語彙力が神ってて!!表現の仕方が好きです。まさかこのシリーズに侑君が出るとは。頑張って下さい! (2023年3月5日 9時) (レス) @page1 id: 0b96e038f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さな | 作成日時:2023年3月5日 0時