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3度目は、社会人3年目の夏。
学会で仙台まで出向いた時のことだった。
『最近、バレーボールってすごいよなぁ』
学会会場であるアリーナ。
準備を終えて、明日に備えて帰ろうという時に見つけた広告を見上げる。
そこには牛島選手や影山選手、日向翔陽選手の顔がでっかく載っている。
普段、あんまりスポーツを見ないわたしでも、顔も名前も分かるほどの有名人ばかりだった。
『へぇ、みんな仙台出身なんだ』
広告の下に小さく貼られたスポーツ新聞。
牛島選手らは仙台出身で、高校時代から頭角をあらわしていたんだとか。
きっと想像を絶する高校時代。
大人になってもバレーボールをやっていこうと思う彼らは、一体どんな高校生だったんだろう。
わたしの高校時代と言えば、入学早々、名前も知らない先輩を学校中探し回って、もう卒業してしまっていると分かると、ただただ勉強とボランティアに専念した。
友達が一学年上のロシアと日本のハーフの先輩に夢中だったけれど、わたしは横にいる金髪の、プリン頭の先輩の方が好きだった。
こう思うと、随分と青春を無駄にしたのかも。
まぁその時のボランティアがきっかけで保育士を目指して今があるわけだから、これでよかったのかもしれない。
そんなことを考えていると、ざっと砂の音がして、横に誰かが並ぶ気配がした。
ちらりと横目で見るけれど、随分と背が高くて、逆光で顔は見えない。
でも、さっきまでわたしが見ていた広告を見上げているようで、つられてまた広告に目を戻す。
「オネーサン、バレーに興味あります?」
『え、あ、いや見てただけで…』
まさか声をかけられるとは思ってなくて。
急なことで声が上擦るのが分かった。
それにクツクツと喉を鳴らしたその人は、
楽しそうな声色で続けた。
「この試合今夜なんですけど、よかったら観ていきません?」
『…遠慮します』
「俺、チケット持ってますんで、興味あるならオネーサン招待しますけど」
『残念ですけれど、明日も朝が早くて…』
まさかこんな慣れない土地でナンパされるとは思ってなかった。
まだ夕方でもないけれど朝が早いのは事実だし、世間話だけで終わらないなら早々に立ち去りたい。
愛想笑いを浮かべてやりすごそうとして。
見上げた先、逆光で黒く光って顔はよく見えないけれど、シルエットだけがはっきりと見えていた。
特徴的な、不均一な髪型。
どくん、と心臓が大きく跳ねた。
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nameless - 1話1話読み進めていく毎に高揚感が募っていくような作品でした!またいつか、続きを楽しみにしております (12月20日 10時) (レス) @page42 id: e6c0ea655a (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - 水傘るんさん» 水傘るんさん!ありがとうございます!このシリーズに黒尾さんは必須!と思っていました!大人ですよね…!ありがとうございます頑張ります!! (2023年3月31日 19時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - 菜花さん» 菜花さん、ありがとうございます!彼らの大人時代はどんなのかなぁという妄想から始まった作品ですが、そう言っていただけて嬉しいです🍀💚今後もぜひよろしくお願いいたします! (2023年3月31日 19時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
水傘るん(プロフ) - 面白すぎます........えっやばい。黒尾さぁん.....大人の男すぎますって....最高です....!!!無理されない程度に更新頑張ってください!!応援してます!! (2023年3月26日 2時) (レス) @page27 id: e67109cbac (このIDを非表示/違反報告)
菜花 - めっちゃ大人って感じのハイキューの小説が読めるとは…!と感激しています!スッと内容が入りやすくて魅了されるような文章で尊敬します!なんか上からですみません!応援してます! (2023年3月20日 3時) (レス) @page27 id: da77361163 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さな | 作成日時:2023年1月20日 20時