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「なんて、俺が遅くなったからだよな」
言葉に詰まったわたしをどう捉えたのか、すぐに、ごめん、と小さく聞こえた。目があった黒尾さんは、眉を下げて笑っていた。
そのまま、綺麗な指がためらいなく伸びてきて目尻に触れた。
覚えのあるその仕草に胸が痛む。
泣いていない時でも、黒尾さんはよくこうする。こうすれば、わたしが何も言えなくなるのを分かっているかのようで。
わたしも、黒尾さんを待ってました。
その言葉は、静かに飲み込んだ。
.
「今日さ、高校のヤツらと会ってきたのよ」
黒尾さんは頼んだワインを受け取りながら、何でもないことのようにそう言った。
『高校…ですか？』
「そう。高校の部活のチームメイト。
ちょこちょこ会ってるヤツとか、顔見てるヤツも多いんだけどさ、集まるのはすげぇ久しぶりだったのよ」
黒尾さんの通っていた高校。
それはつまり、わたしが通っていた音駒高校だ。
まだ中学生だった頃の、黒尾さんとの記憶が一気に蘇ってきて、少しだけ頭の奥がズンと疼いた。
どうしていいかわからずワインを飲むと、もう慣れたはずの渋さが口に広がった。それが大人になったことを思い出させてくれた気がして、ゆっくりと呼吸を繰り返す。
『部活って、何してたんですか？』
「バレーボール。
ガキの頃にハマって、そのまま続けてた。
俺、これでも一応、全国つれてったキャプテンだったんですよ？」
『え、全国って…というかキャプテン！？
え、何ですかそれ！すごい！』
「おー、予想以上のリアクションだな」
そういえば聞いたことあった気がする。
音駒のバレー部は、昔は全国にいくほどの強豪だった。わたし達の頃に、また全国に行ったとか何とか…
まさかそれが、黒尾さんの話だなんて。
「チームがよかったんだよ。
アイツら…あ、今日会ってきたヤツらなんだけどさ、ほんっとあの頃からたくましかったけど、今はもっと立派にやってて、何か安心した」
ワイングラスをゆらゆらと動かすその横顔は、わたしの知らない黒尾さんだった。
きっと、チームメイトを想う、キャプテンの顔。
高校時代、わたしは黒尾さんに会うことはできなかった。
年月を重ねて、今の黒尾さんを知ることはできたけれど、高校生の黒尾さんを、わたしは知らない。
知りたくても知ることができなかったあの頃の彼が、今、目の前にいるような。
そんな不思議な感覚がした。
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nameless - 1話1話読み進めていく毎に高揚感が募っていくような作品でした！またいつか、続きを楽しみにしております (12月20日 10時) (
レス) @page42 id: e6c0ea655a (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - 水傘るんさん» 水傘るんさん！ありがとうございます！このシリーズに黒尾さんは必須！と思っていました！大人ですよね…！ありがとうございます頑張ります！！ (2023年3月31日 19時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - 菜花さん» 菜花さん、ありがとうございます！彼らの大人時代はどんなのかなぁという妄想から始まった作品ですが、そう言っていただけて嬉しいです🍀💚今後もぜひよろしくお願いいたします！ (2023年3月31日 19時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
水傘るん(プロフ) - 面白すぎます........えっやばい。黒尾さぁん.....大人の男すぎますって....最高です....！！！無理されない程度に更新頑張ってください！！応援してます！！ (2023年3月26日 2時) (レス) @page27 id: e67109cbac (このIDを非表示/違反報告)
菜花 - めっちゃ大人って感じのハイキューの小説が読めるとは…！と感激しています！スッと内容が入りやすくて魅了されるような文章で尊敬します！なんか上からですみません！応援してます！ (2023年3月20日 3時) (レス) @page27 id: da77361163 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さな | 作成日時：2023年1月20日 20時
