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『何を考えてるんですか!?』
「何って、そうだと思ってたんだけど、違った?」
『違、くはないですけれど…』
光くんが再び前を向いて歩き出したのを確認してから、声を小さくして先輩に詰め寄る。
その薄い表情がかすかにニヤリと動いたのを見て、からかわれているのだと気づくのに時間はかからなかった。
やっぱり、赤葦先輩は気づいていた。
気づいた上で、きっと楽しんでいるんだ。
どうしたものかと頭を悩ませた、その瞬間だった。
「頑張ってね」
『…は?』
「応援、って具体的にどうしたらいいのかわからないけど、話したくなったらいつでも聞くから」
さっきまでの悪い顔が嘘のような、優しい声。
顔を上げると、いつも通りの無表情に戻っていて、
もう感情が追いつかない。
応援、って言った?
赤葦先輩が?何で?
『で、でも…』
「木葉さんとかに、もうしてるんだとは思うんだけど」
淡々と言葉を繋げる赤葦先輩が、何を考えているのか。
そんなこと、もうわからなかった。
『…何で、そんなこと』
「あの木兎さん相手だと、色々と大変でしょ」
そういえば。
前に木葉くんにも同じようなことを言われた。
光くんがド天然だとか、鈍感だとか何とか…
赤葦先輩はそれが理由で、光くんへのこの気持ちに肯定的なの?
否定されてないのだから、それでいいのだけど。
でも色々と考えを巡らせていたからか、素直に受け入れることができなかった。
「それに」
そこで言葉を区切った赤葦先輩。
続きを待っていた時に見た、その顔に、息を飲む。
初めて見る表情。
でも、どこか懐かしいような気がして。
しばらくして、わたしのよく知る大好きな光くんも、
たまにこういう顔をするのだと思い出した。
優しい、どこまでも優しい顔。
それでいて、どこか影を感じさせる、切ない顔。
光くんの、この顔を見るようになったのは、
いつからだっけ、思い出せない。
「俺にとって木兎さんも、大事な人だからね」
『…大事な、人』
「そう。あんなんだけど、木兎さんも大事だから、幸せになってほしいって思うんだよ」
その言葉は、素直に受け取ろうと思ったことを、
よく覚えている。
これを機に、わたしは赤葦先輩に光くんのことをよく相談するようになった。
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さな(プロフ) - ごんすけさん» 嬉しすぎますありがとうございます!励みになります✨ (2022年12月18日 19時) (レス) @page25 id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
ごんすけ(プロフ) - 大好きですありがとうございます(語彙力の消失) (2022年12月18日 16時) (レス) @page23 id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - りるるさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!今後も楽しんでいただけたら嬉しいです🧡 (2022年12月18日 15時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
りるる(プロフ) - 好きです‼︎💕 (2022年12月15日 16時) (レス) @page2 id: 6abbd94f19 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さな | 作成日時:2022年11月30日 21時