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「だーっ、もうわっかんねーよ!
休憩しようぜ休憩!!」
机の上に広げられた教科書とノート。
散らばったたくさんのペン。
それらの上に、光くんがぼてっと崩れ落ちた。
テスト週間に入ったわたし達は今、
空き教室で勉強をしている。
わたし達、というのは
光くんとわたしと、それから…
「木兎さん、まだ15分しか経ってません。
もう少し頑張りましょう」
相変わらずの無表情で光くんを見つめる、赤葦先輩。
この3人だ。
廊下でたまたま会った赤葦先輩に一緒に勉強をしよう、と言われたのがつい先週。
その時の雰囲気が何だかいつもと違くって、心臓をバクバクさせながら1週間を過ごしていたけれど。
そんなわたしの緊張をあざ笑うように、
つい1時間ほど前に図書室にやってきた赤葦先輩の後ろには、それはそれは小さくなった光くんがいた。
光くんがうるさくなるから、と場所を空き教室に移動して。
まだ状況が理解できずに混乱しているわたしを前に、
さて始めようか、と口角を上げた先輩は、それはもう悪い顔をしていた。
緊張も、困惑も、ドキドキも。
光くんへの気持ちも。
全て見透かされているようだった。
「だあって、Aも赤葦も静かすぎてつまんねーんだもん」
「つまらないって…勉強しないと木兎さんまた赤点ですよ」
「んなっ!!赤葦それは!!」
急な光くんの大きな声に思わず、え、と声が漏れる。
ふわふわとした思考が、ぐっ、と現実に引き戻される。
見つめた先、光くんが恐る恐る、というようにこちらの様子を伺っていることでおおよそ理解をしてしまったけど、聞かずにはいられない。
『光くん、いつも赤点なの…?』
「ほらもー!!Aにはバレたくなかったのに!」
「次も赤点取りたくなかったら、せめてその単元は終わらせてから休憩にしましょう」
やっぱりそうなんだ、と2人のやりとりをぼんやり眺める。
赤葦の鬼!と叫ぶ光くんは、膨れながらも素直にペンを握り直した。
…本当に、どっちが先輩なのか。
わたしも気合いを入れ直さねば、とペン持つ手に力を込めた。
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さな(プロフ) - ごんすけさん» 嬉しすぎますありがとうございます!励みになります✨ (2022年12月18日 19時) (レス) @page25 id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
ごんすけ(プロフ) - 大好きですありがとうございます(語彙力の消失) (2022年12月18日 16時) (レス) @page23 id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - りるるさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!今後も楽しんでいただけたら嬉しいです🧡 (2022年12月18日 15時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
りるる(プロフ) - 好きです‼︎💕 (2022年12月15日 16時) (レス) @page2 id: 6abbd94f19 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さな | 作成日時:2022年11月30日 21時