五話 ページ7
食料もなく、行くあてもなく。
雨は降り続き体も冷えきった。
兄に会いたい。会えない。
もう死んでしまう。
そう思って蹲っている時に出会ったのが、じいだった。
家に入れて、私を見て驚いた顔をして…
ーー鬼殺隊に入れ。そのために鍛錬をする。
そう言われ、じいのもとで鍛錬を受け始めたのだった。
ほかにすることも無い。帰る家もない。きさつたいが何かわからなかったけど、何となくやろうと思った。
なにより、じいはすごく優しい。鍛錬は地獄のようだけど。
それから長い年月が過ぎて、今に至るのだ。
「A。そろそろいい頃合だ、最終選別の話をしよう」
『それは何ですか』
聞けば、鬼殺隊に入るための試験だとか。山へゆき、試練を達成すること。そうすれば晴れて鬼殺隊の一員だ。
きさつたいのきさつは鬼殺、鬼を殺す。鬼狩りをする隊だと初めて知った。
それまではただ漠然と鍛錬を積み、技を習得した。こちらからもきさつって何だ、とは尋ねなかったため、知る由もなかったのだ。
「お前は強い。山で見た時からそう思っていたよ」
『何故ですか』
「あんな状態でも、“全集中の呼吸”をしていたのだから」
『ぜん…?』
「全集中の呼吸は、肺を大きくして血中に大量の酸素を送り込むことで力を増幅させる呼吸だ。普通それを自分で知らぬ間に会得することはできないはずだが…お前はそれをやっていた」
『いつですか』
「ずっとだ。“常中”というやつだ」
知らない事実をたくさん突きつけられ、驚きを隠せなかった。
「いくつか技を習得しただろう?あれも呼吸の仕方で、爆発的に上昇させた身体能力を利用してそれぞれの呼吸ごとに型を使って繰り出すものなんだよ」
『はぁ…』
「水の呼吸、炎の呼吸。風の呼吸、音の呼吸、花の呼吸…それはそれは多種多様だ」
『私のは、何の呼吸ですか』
それが分からないのだと。きっと何かの派生だろう、まだ前例がないから自分で名前をきめろと言われた。
そんな事言われても…
「自分の技から想像を膨らませても良い。なにを想像して技を出している?」
私は…
大好きな、兄を。
また会いたいな、とずっと思っている。
鍛錬の時も。寝る時も。いつでも。
兄。時透有一郎と、時透無一郎。
『私は』
「うむ?」
『兄を思わない日はありません』
「兄か。仲が良かったのか」
『兄は私を大切にしてくれました』
名前は…有。無。
『有る、無い』
それが示すのは。
『存在。』
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シャンプー(プロフ) - ゆーさんさん» 不快に思われたのなら申し訳ありません。注意書きを付け足しておこうと思います。 (2019年8月9日 12時) (レス) id: 2be3b2296e (このIDを非表示/違反報告)
ゆーさん(プロフ) - あくまで二次創作ですので、時透母についてはこういう人なのだというような感想を持たないようにお願いします。 (2019年8月8日 17時) (レス) id: 91a8b31b94 (このIDを非表示/違反報告)
シャンプー(プロフ) - にこちゃんさん» ありがとうございますー!!!私も時透くん推しです!!じわじわ書き進めておりますのでまったりお待ちくださいませ…!! (2019年7月22日 21時) (レス) id: 2be3b2296e (このIDを非表示/違反報告)
にこちゃん - 私、推しが時透君なので嬉しいです!更新待ってます!応援しています!! (2019年7月22日 21時) (レス) id: 5d74a38634 (このIDを非表示/違反報告)
シャンプー(プロフ) - ゆずさん» ありがとうございます!!!時透くんかっこかわいいですよね!頑張ります…!! (2019年7月22日 17時) (レス) id: 2be3b2296e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シャンプー | 作成日時:2019年7月22日 1時