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「一生忘れないように。って目一杯吸い込むのに日が経っていくうちに"どんな匂いだっけ"とか考えて。
そのうちどんどん思い出せなくなって泣きたくなるんだろうな」
「A、」
「そんでさ、何年か後にたまたま会って
あんなに思い出せなかった匂いがあってそれにまた泣きそうになって懲りずにいっぱい吸い込むんだよね」
「おい、A!」


たまらず俺のTシャツにうずめてたAの顔を手で挟んで自分と目を合わせる。





「ねぇなんでそんな事言うの?
何年か後とかって何?忘れないようにずっと会ってればいいじゃん。Aこの間からおかしいよ…?」
「あは、なに北斗例え話じゃん顔怖いよ?」
「例え話には聞こえなかったんだけど」
「やだなぁ、でも私は街中で北斗の匂いがしたら
ついて行きたくなるくらいには鼻にこびりついてるよ。」
「そんなの俺だって、」
「そうなの?やった、じゃあその匂いがしたら私を思い出すってわけだ。」

Aがそっと自分の顔を挟んでた俺の手を掴んで下ろした。




たまらなく不安になってAを抱き締める。

「A」
「ん?」
「俺のこと離さないで…」
「ほくと…?」

俺の声が震えていたのか顔を覗こうとしたからAの頭を自分の体にくっつけるようにギューッと抱きしめた。


「ほっく、いたい…」
「もうひとりじゃ無理なんだって…」
「…。」
「A以外いらないの…なんでわかってくれないの…」

ごめん、ごめんね。
こんなに重くなっちゃった…。
Aはダメだ。って
そうなったら北斗の守るものが壊れる。って
いつも言ってるし守るべきものが自分にとってどれだけ大事かはわかってんだけど、
でもさ、もうしょうがないじゃん…。





「北斗?」
「…ん?」
「私が思い出す北斗は、」
「…。」
「私をちゃんと愛してくれてるよ」

Aは抱きしめられた体制でそう呟く。




「北斗が思い出す私は北斗をちゃんと愛せているのかな…」



それを聞いた瞬間涙が止まらなくなってさ。
こんなに愛をもらってるのに俺がもっともっと、って…
いくらAに好きと言われたって

「じゃあ一秒後は?明日は?一年後は?」

ってどんどん未来の事を考えて不安になるんだ。
でもそれが、Aにこうやって言わせる原因となってる。
わかってないのは俺の方なんだ。

Aはその時その時をちゃんと愛してくれてるのに
俺は今を見ずにその後を求めちゃって…。




3→←"君が思い出す僕は君を愛しているだろうか"



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作者名:やま x他1人 | 作成日時:2019年6月23日 0時

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