Everytime Everything……S.K. ページ33
｢え、泊まり？｣
｢そう、取材したいとこがあんのよ。あとから行くから、先に行っててくれねぇ？ 見てきて欲しいものがあってさ｣
シゲが、パソコンに向かってパタパタしながらそう言った。
大忙しの毎日、一緒に住んでるけど顔見るくらいで全然話せてないな、って思ってた時のこと。
わたしは定位置のソファから、デスクにいるシゲをながめる。
｢代わりに取材しろってこと？｣
｢取材がてらゆっくりしてこない？ってこと｣
｢あらーうれしい｣
｢ふ｣
笑いを隠してるつもりみたいだけどちゃんと見えてる。
シゲの動きなんてすぐわかるんだから。
｢なんでわらうの｣
｢Aって相変わらず素直だなーと思って｣
今度はちゃんと笑いながらそういうと、のばしたヒゲをサリサリってさわりながらこっちを見る。
｢忙しくてなかなか相手できないし、ちょっとくらいは2人でさ｣
｢別にいいのに。ここで一緒にいるだけでもたのしいよ？｣
｢変なやつ｣
｢なにがよー｣
シゲの方に、持ってたクッションを投げつけてやる。クッションはぽこん、とうまいことシゲの肩に当たる。
｢コントロールいいなぁ｣
｢シゲアキとは違いますからねー｣
｢あーん？｣
投げ返してくるシゲ。
……やっぱりわたしの手前で落ちるクッション。
くすくすくす。
二人で笑ってしまう。
｢家にいるとつい仕事モードぬけないからさ。一緒に、ゆっくりしたいんだよ、俺が｣
｢……あら、すなお｣
なんて言いながら顔が赤くなってしまうのが自分でもわかる。
仕方なくクッションを取るふりで顔をかくす。
｢そんでどうですか？ その日空いてますか？｣
｢……あいてます｣
｢じゃ決まりだ。よーし、スピードあげちゃお｣
ちょっとのびをすると、幸せそうに笑ってからパソコンに目を落とす。
そんなシゲが愛しくて愛しくて、
ちょっぴり泣けた。
めっちゃ忙しいくせに、いつでも気にしてくれてありがとう。
シゲアキがいるから、生きていけるよ。
なんて言ったら重すぎるよね。
でも本当なんだ、って、シゲアキの背中を見つめた。
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作者名：由乃 | 作成日時：2020年10月27日 11時
