どうしてだろう……side K.K. ページ11
｢用事ってそれだけ？｣
｢そうだけど｣
｢じゃあLINEでも良かったのに。わざわざ電話してこなくても｣
｢……そんな言い方っ、ないんじゃ、ないかなぁ｣
最後の方はちょっと小さめになってしまうオレの声。
君には届いてるのかどうか、いやに冷静な声で返事が来る。
｢あらごめん、変な言い方したつもりはなかったけど、LINEですむのになと思っただけよ｣
それがひどいと思うんだけど。
ふつう、好きな人の声は何時だって聞きたいものじゃないか？
好きな人の、場合は、だけど。
｢Aはつめたい｣
ちょっと甘えてみる。
でも、相変わらず彼女はクールで。
｢いつもこんなんでしょ。小山くんは繊細すぎない？｣
｢いつまで小山くんて呼ぶの？｣
｢え、小山くんが小山くんな限り小山くんて呼ぶけど｣
｢……じゃあおれ、Aの苗字になる｣
｢いいよー。たぶん出来ないと思うけど。小山くん長男だし、なんだかんだいって女の苗字なんかになれない人だと思うし、だいたい仕事に差し支えるからなー｣
｢……！……｣
わかられてる。
でもそんな無下に言わなくても良くない？
なんでこう、Aはクールなんだろ。やっぱり、俺の事なんかなんとも思ってないんだろうか？
ため息をついて、あの夜を思い出してみる。それから、あの夜とあの夜のことも。一夜の間違いと言えないくらい間違いばっかり起こしてるのに、なのにまだ、恋人と思って貰えてないんだろうか？
｢小山くん？｣
｢Aはさ、俺のこと｣
｢小山くんのこと？｣
｢好き？｣
ストレートに言ってみる。笑うなら笑え。欲しいものはどんな手を使ったって手に入れるんだ。
｢好きだけど？｣
なのに君って人は、涼しい声ですぐに答える。
何でそこに感情が入ってこないの。
悔しくって泣きそうだ。
｢……俺も好き｣
｢うれしいなー｣
感情こめてよ！！
棒読みなんだけど！！！
もういい。
今日のところはもう退散する。また装備を整えてから突撃する。
言っとくけどオレ、負けないよ！？
｢じゃあもう切るよ｣
｢うん、あ｣
｢なに？｣
｢ほんとに好きよ、慶ちゃん｣
ぷつん、と、電話は切れる。
｢ああああ？｣
思わず声を上げたけど、手の中のスマホはつめたく画面を見せている。
ワガママで勝手なオレの彼女。
なんでこんなに夢中になっちゃうのかな。
オレはスマホを握りしめたまま、ひっそり笑う。
全然思う通りにならない君。
どうしてだろう。
大好きだよ。
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作者名：由乃 | 作成日時：2020年10月27日 11時
