「ヤンチャな般若」(壱) ページ9
それはいつも通り、Aが部屋で書類作業を進めている最中でのことであった。
突然、叩き壊す勢いで障子が開け放たれたのだ。
その音に驚いて腕が震え、文字が歪みそうになるのを何とか寸止めする。
Aが障子の方を見やると、そこにはやけに息の上がった般若がいて、こちらを凝視していた。
「A! 恋人出来たって本当なの!?」
ああどんどん広まる、とAは心の中で呟き、気を滅入らせながら筆を置いた。
「はい。本当です」
般若の眉と口端がピクリと強張る。
「へぇ〜どんな男なのさ?」
「え……一言で言うなら、神様です」
人間の男ではなく神だと聞いて般若は目を丸くさせたが、人ならざる者とも関わりが深いAならあり得るなと納得した。
まあ神だか何だか知らないけどどーせろくな奴じゃない、と胸のムカムカに耐えながら般若はまた質問する。
「かっこいい?」
「かっこいいですよ」
「……ふーん」
白い肌に薄っすらと青筋を浮かべつつも笑顔を崩さない般若の視線を浴びながら、Aはこっそり冷や汗を拭った。
Aは決して鈍くなどない。
般若が劣情を燃やしていることくらい、勿論察知している。
どう回避しようかと密かに悩んでいると、在ろうことか「そいつを見てみたい」と般若が強請り始めた。
そういうことでAは仕事を中断、般若を連れて荒を探しに行くことになった。
広い宮廷を適当に歩き回って、ようやく荒と出会す。
「般若。このお方が荒様ですよ」
Aの背後に隠れていた般若がひょこっと顔を出して、荒を眺めた。
Aの言った通り本当にかっこいい男なので、ギリギリと歯軋りしてしまう。
剥き出しの敵意を隠そうともせずに般若は言葉を投げた。
「お前がAの彼氏?」
「……そうだ」
般若は荒の顔をじろじろと観察してから、ふんと勝ち誇ったように鼻を鳴らす。
「まあまあ綺麗な顔してんじゃん。僕の足元にも及ばないけどね!」
「……何だこの生意気な小妖怪は」
と荒に聞かれても、Aは苦笑いを返すことしか出来なかった。
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イズモ(プロフ) - 茶々丸さん» わ〜ご愛読ありがとうございます!!…荒の声優さんに念を送ってもらいましょう!(平安京ラジオ) (2019年9月23日 18時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
茶々丸 - 一年経っても見させてもらってます!荒来てくれえぇぇ!大歓迎だぞぉぉお! (2019年9月23日 10時) (レス) id: 65a910c7b3 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - 横ごりらさん» !!確かに!荒って何か…自分のこと好きじゃなさそうな気がするんですよね…伝記でもどっちかと言うと人間より自分を責めてる感があるように思えますし…どれも個人意見ですが(´-ω-`)こちらこそ、荒のこと語り合えて楽しかったです!ありがとうございました! (2018年9月11日 21時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
横ごりら(プロフ) - イズモさん» 「愚か者め!」「愚かな・・」とかもよく言ってますが、「愚か」って、自分自身にも思っててよく使う言葉なのかな・・とも思いました>< いえ!とんでもないです!またイズモさんのお話を聞けてとっても嬉しいです!(^///^)お返事くださり有難うございました! (2018年9月11日 9時) (レス) id: 72764b205c (このIDを非表示/違反報告)
横ごりら(プロフ) - イズモさん» 私も想像になってしまいますが、もしも叱ってくれているのだとしたら本当に優しいですよね・・・常に無表情で厳しい言動の裏では、本当は自分以外の存在をいつも気にかけてくれているのかなと思えます(;_;)いっそ本心から見下して関わらなければいいのに・・(;_;) (2018年9月11日 9時) (レス) id: 72764b205c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イズモ | 作成日時:2018年6月30日 20時