「荒海の神子」(拾) ページ46
震えるAの背に、少年の腕が回される。
「貴女は天女のようなお方です……綺麗で、とても温かい……」
そっと押し返され、Aは少年を解放する。
少年は、涙を流しながら、笑っていた。
「僕はAさんのことが好きです」
「……私も、貴方のことが好きですよ」
少年は恍惚とした笑みを浮かべる。
この曇天の下にはあまりにも相応しくない程の、希望に満ち溢れた笑顔。
嬉々としながら少年はAの手を取り、その指先に軽く唇を当てた。
貴女に神の御加護がありますようにと、祈るように。
神々しい少年の姿に、Aもまた見惚れていた。
「もしも生まれ変わることが出来たら、貴女の側にいても良いですか？」
Aは力強く頷いた。
少年はまた笑った。
ゆっくりと、手が離れる。
「Aさん。ありがとう」
少年が海の中へ歩いて行くのを、Aは黙って見つめていた。
やがて波が少年を攫っていった。
曇り空が微かに晴れ、荒れていた海は元の落ち着きを取り戻して行く。
「……大火事……」
Aは静かに涙を零しながら、考えていた。
少年が最期に遺した不吉な予言。
大きな町とは、恐らく都のことだ。
「外れて欲しい予言ではありますね……」
Aは深刻な面持ちのまま、海に向かって独り言ちた。
あの少年は、海神様とやらが遣わした者だったのだろうか。
都に降り掛かろうとしている災を、伝えに来た者だったのだろうか。
人間の為に。
きっとそうに違いない。
Aは胸元を掻き毟るように抑えた。
心が、張り裂けてしまいそうだった。
痛い。
でもきっと少年の方がもっと痛いし、辛いだろう。
その痛みを、代わってあげられるのなら、代わってあげたかった。
打ち拉がれるAを、誰かが背後から抱き締める。
「荒様……」
「村人達が私に向かって海へ行けと叫ぶ中……たった一人、子供相手にそこまですることはないと皆に言った女がいた」
開口一番に自分の過去について語り始めた荒に困惑しながらも、Aは懸命に耳を傾ける。
「だがその女は、私が嘘つきであるということは決して否定しなかった」
荒は重苦しく溜息をついた。
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イズモ(プロフ) - 茶々丸さん» わ〜ご愛読ありがとうございます！！…荒の声優さんに念を送ってもらいましょう！(平安京ラジオ) (2019年9月23日 18時) (
レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
茶々丸 - 一年経っても見させてもらってます！荒来てくれえぇぇ！大歓迎だぞぉぉお！ (2019年9月23日 10時) (レス) id: 65a910c7b3 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - 横ごりらさん» ！！確かに！荒って何か…自分のこと好きじゃなさそうな気がするんですよね…伝記でもどっちかと言うと人間より自分を責めてる感があるように思えますし…どれも個人意見ですが(´-ω-`)こちらこそ、荒のこと語り合えて楽しかったです！ありがとうございました！ (2018年9月11日 21時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
横ごりら(プロフ) - イズモさん» ｢愚か者め！｣｢愚かな･･｣とかもよく言ってますが、｢愚か｣って、自分自身にも思っててよく使う言葉なのかな･･とも思いました>< いえ！とんでもないです！またイズモさんのお話を聞けてとっても嬉しいです！(^///^)お返事くださり有難うございました！ (2018年9月11日 9時) (レス) id: 72764b205c (このIDを非表示/違反報告)
横ごりら(プロフ) - イズモさん» 私も想像になってしまいますが、もしも叱ってくれているのだとしたら本当に優しいですよね･･･常に無表情で厳しい言動の裏では、本当は自分以外の存在をいつも気にかけてくれているのかなと思えます(；_；)いっそ本心から見下して関わらなければいいのに･･(；_；) (2018年9月11日 9時) (レス) id: 72764b205c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イズモ | 作成日時：2018年6月30日 20時
