「荒海の神子」(参) ページ39
少年の体が大袈裟に思う位、ビクッと激しく揺れた。
「どうしてそれを……！？」
慄きながら徐々に後退りして行く少年に深追いはせず、Aは冷静さを保ちながら再び質問をする。
「私のことが分かりますか？」
少年はぶんぶんと首を大きく振った。
夢と現が別世界であるのと同様に、荒の夢の中の少年とはやはり別物の存在。
ではこの少年は、時代を超えて現世に参上したということなのだろうか。
そんなことが、実際に起こるとは思えない。
しかし現に起こってしまっている以上、この状況を受け入れるしかないのだろう。
「あ、あの……ごめんなさい……」
何故か少年は、Aに謝った。
Aが自分を知っていたのに対し、自分はAのことを知らない、それについての謝罪なのだろうか。
事実お互い初対面であるのだから、彼には何も非がないというのに。
とにかく少年を安心させる為、Aは穏やかに笑って見せた。
「私はAといいます。貴方の名前は？」
「ぼ……僕には、名前がありません……」
「では、周りの方々からは何と呼ばれていたのですか ？」
「……神子様、とか……あと……神使様」
答えた直後に少年はくしゃみをし、体を覆う布をギュッと引き寄せ暖を取ろうとした。
もう肌寒い季節であるのに、濡れた格好のまま都まで歩かされていたからだ。
湿った髪の毛や半乾きの衣服から、微かに潮の香りが漂ってくる。
少年に対する周りの扱い方に、Aは少々立腹した。
「このままでは風邪を引いてしまいます。今直ぐお湯に浸かりましょう。代わりの着替えは、こちらで用意しますからね」
淡々と少年に伝えてからAは歩き出すが、少年が自分の後を付いて来ないのに直ぐ気がつき、足を止めて振り返る。
少年はポカンとしながら、Aのことを、探るように見つめていた。
Aは優しく微笑んだ。
「どうしましたか？ 早く行きますよ」
「あ……はいっ……」
少年は急ぎ足でAの元へ行く。
毛先に溜まっていた小粒の雫が、走った振動できらきらと散る。
Aは少年が自分の隣に立つのを見てから、湯殿までの案内を開始した。
弱っている少年に、歩調を合わせてあげながら。
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イズモ(プロフ) - 茶々丸さん» わ〜ご愛読ありがとうございます！！…荒の声優さんに念を送ってもらいましょう！(平安京ラジオ) (2019年9月23日 18時) (
レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
茶々丸 - 一年経っても見させてもらってます！荒来てくれえぇぇ！大歓迎だぞぉぉお！ (2019年9月23日 10時) (レス) id: 65a910c7b3 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - 横ごりらさん» ！！確かに！荒って何か…自分のこと好きじゃなさそうな気がするんですよね…伝記でもどっちかと言うと人間より自分を責めてる感があるように思えますし…どれも個人意見ですが(´-ω-`)こちらこそ、荒のこと語り合えて楽しかったです！ありがとうございました！ (2018年9月11日 21時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
横ごりら(プロフ) - イズモさん» ｢愚か者め！｣｢愚かな･･｣とかもよく言ってますが、｢愚か｣って、自分自身にも思っててよく使う言葉なのかな･･とも思いました>< いえ！とんでもないです！またイズモさんのお話を聞けてとっても嬉しいです！(^///^)お返事くださり有難うございました！ (2018年9月11日 9時) (レス) id: 72764b205c (このIDを非表示/違反報告)
横ごりら(プロフ) - イズモさん» 私も想像になってしまいますが、もしも叱ってくれているのだとしたら本当に優しいですよね･･･常に無表情で厳しい言動の裏では、本当は自分以外の存在をいつも気にかけてくれているのかなと思えます(；_；)いっそ本心から見下して関わらなければいいのに･･(；_；) (2018年9月11日 9時) (レス) id: 72764b205c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イズモ | 作成日時：2018年6月30日 20時
