検索窓
今日:2 hit、昨日:13 hit、合計:45,026 hit

「女と酒と片割れと」(捌) ページ26

酔いを覚ましてやる。


確かにそう言った荒だが、Aに対し特に何か介抱する訳でもなく、着々と歩みを進めていた。


このまま順調に進んで行けば、辿り着く場所は湯殿なのだが。


訳が分からず、Aはキョトンとする他なかった。


「……」


なんとなくだがAは、我が身の安全が危機に晒されているのを感じた。


それは何故なのか、何なのかが全くはっきりとしない。


要因である荒の言葉の意味を噛み砕こうと、Aはとにかく必死になって思考を回転させる。


「……酔いを覚ま……あっ!」


Aは隠された言葉の意味を察してしまった。


「す……荒様。まさかだとは、思いますがっ……!」


酔いとはまた別の熱がAの頬を赤く染めた。


動揺のあまり吃るAを不服な表情で見下ろしながら、荒は首を傾げる。



「一度は混浴した仲であるのに、今更何を恥じることがある」



やはりか、とAは目が回りそうになった。


己の勘の良さを呪ったが、寸前まで何をされるか気づかないよりは、幾分かマシであるだろう。


逃げる対策を立てられるかもしれないからだ。



「蒸し返さないでくださいよっ……今思い出すと恥ずかしいのですから」


「……平然としていた癖に」


「それは……あの時は荒様のことを別に何とも思ってなかっ……」


ハッとAは滑らせた口元を押さえる。


言葉の選択判断が甘かったのは、悪酔いしているせいだろう。


荒は眉間にしわを寄せてAを睨んでいる。


荒からしてみれば、あれは恥辱の出来事。


Aの発言で怒りを露わにしてしまう心中は、誰でも察することが出来る。


Aは慌てて補足した。


「そ、そんな怖い顔をしないでください……今は好きですよ。ですから恥じているのであって」


「もう良い。分かった」


「はい?」


何が、とAが問う前に、荒は宣言した。



「あの時の私と同じ気分を味合わせてやる」



「!?」



……回避する隙など当然与えられるはずも無く、湯殿の入り口に到着してしまった。

「女と酒と片割れと」(玖)→←「女と酒と片割れと」(柒)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (49 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
29人がお気に入り
設定タグ:陰陽師 , 陰陽師(ゲーム) ,   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

イズモ(プロフ) - 茶々丸さん» わ〜ご愛読ありがとうございます!!…荒の声優さんに念を送ってもらいましょう!(平安京ラジオ) (2019年9月23日 18時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
茶々丸 - 一年経っても見させてもらってます!荒来てくれえぇぇ!大歓迎だぞぉぉお! (2019年9月23日 10時) (レス) id: 65a910c7b3 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - 横ごりらさん» !!確かに!荒って何か…自分のこと好きじゃなさそうな気がするんですよね…伝記でもどっちかと言うと人間より自分を責めてる感があるように思えますし…どれも個人意見ですが(´-ω-`)こちらこそ、荒のこと語り合えて楽しかったです!ありがとうございました! (2018年9月11日 21時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
横ごりら(プロフ) - イズモさん» 「愚か者め!」「愚かな・・」とかもよく言ってますが、「愚か」って、自分自身にも思っててよく使う言葉なのかな・・とも思いました>< いえ!とんでもないです!またイズモさんのお話を聞けてとっても嬉しいです!(^///^)お返事くださり有難うございました! (2018年9月11日 9時) (レス) id: 72764b205c (このIDを非表示/違反報告)
横ごりら(プロフ) - イズモさん» 私も想像になってしまいますが、もしも叱ってくれているのだとしたら本当に優しいですよね・・・常に無表情で厳しい言動の裏では、本当は自分以外の存在をいつも気にかけてくれているのかなと思えます(;_;)いっそ本心から見下して関わらなければいいのに・・(;_;) (2018年9月11日 9時) (レス) id: 72764b205c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:イズモ | 作成日時:2018年6月30日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。