「ヤンチャな般若」(伍) ページ13
「僕帰る」
「えっ」
Aの声の調子から微かな解放感が伝わり、般若はますます気持ちが落ち込んだ。
あーあ、とこぼしながら、腰掛けた丸太から立ち上がる。
腰の後ろで手を組んで、落ちている適当な小石を蹴り上げてから、Aをじっとりと見やった。
「A変わっちゃったよね……やっぱアイツのせい?」
般若は不貞腐れながら頬を膨らます。
「……?」
以前かぐや姫達にも「雰囲気が変わった」と言われたが、A自身には自覚がない。
そんなAの為に、般若は解説をする。
「多分前のAだったらさ、嫌とかそういう感情を相手に絶対悟られないようにするでしょ?」
「…………そう、かもしれませんね」
これまでの自分を振り返ってから、Aは小さく答えた。
般若のことだって、波風立てずもっと上手にあしらえていた気がする。
「そうでしょ。今のAはちょっと分かりやすい」
般若は腰に手を当てながらAの前に立ち憚った。
ほんの少し可愛子ぶれば直ぐに人を騙せる容姿を持つ般若は、残忍な本性を隠し通すのが大の得意だ。
そんな般若は勝手ながら、Aと自分は同類だと思っている節がある。
Aが猫被りな性格であるのかと言えば断じて違って、無理してでも自分より他人の気持ちを優先する辺りに引っ掛かるところがあった。
つまり本当の自分を隠しているという点をこじつければ、Aも般若も同類である。
同類であるからこそ般若は、Aの心の内に敏感だった。
だがそれを踏まえた上で、般若はAのことが大好きであった。
捻くれた般若から見ても、Aの持つ心優しさは本物であると思えるものだからだ。
29人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イズモ(プロフ) - 茶々丸さん» わ〜ご愛読ありがとうございます!!…荒の声優さんに念を送ってもらいましょう!(平安京ラジオ) (2019年9月23日 18時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
茶々丸 - 一年経っても見させてもらってます!荒来てくれえぇぇ!大歓迎だぞぉぉお! (2019年9月23日 10時) (レス) id: 65a910c7b3 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - 横ごりらさん» !!確かに!荒って何か…自分のこと好きじゃなさそうな気がするんですよね…伝記でもどっちかと言うと人間より自分を責めてる感があるように思えますし…どれも個人意見ですが(´-ω-`)こちらこそ、荒のこと語り合えて楽しかったです!ありがとうございました! (2018年9月11日 21時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
横ごりら(プロフ) - イズモさん» 「愚か者め!」「愚かな・・」とかもよく言ってますが、「愚か」って、自分自身にも思っててよく使う言葉なのかな・・とも思いました>< いえ!とんでもないです!またイズモさんのお話を聞けてとっても嬉しいです!(^///^)お返事くださり有難うございました! (2018年9月11日 9時) (レス) id: 72764b205c (このIDを非表示/違反報告)
横ごりら(プロフ) - イズモさん» 私も想像になってしまいますが、もしも叱ってくれているのだとしたら本当に優しいですよね・・・常に無表情で厳しい言動の裏では、本当は自分以外の存在をいつも気にかけてくれているのかなと思えます(;_;)いっそ本心から見下して関わらなければいいのに・・(;_;) (2018年9月11日 9時) (レス) id: 72764b205c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:イズモ | 作成日時:2018年6月30日 20時