変人野郎を黙らせるには。 (ページ5)

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賑やかな教室の一番後ろ、最終列、

私の特等席へ向かう。

朝だというのにずいぶんと賑やかな教室。

眠気が覚めるどころか、イライラが

増しそうだ。

椅子に座るのと同時に、

教室のドアが勢い良く開いた。

「なーつめちゃーん！」

その声に教室の誰もが

その叫ぶ本人の方に振り向く。

一瞬だけ、静まった教室。

途端にざわざわとしだす。

そんな事も気にせずキョロキョロと

見渡し、目が合うと満面の笑みで

もう一度私の名前を呼んだ。

しまった。

「棗ちゃん…！」

全速力で机を掻き分け、

こちらへ近付いてくる。

危機感しか感じないその光景に

いつか見たホラー映画のような

光景が重なって

咄嗟に地面を蹴った。

「え、ちょ、何で逃げんの！…ねえ！」

勢い良く教室を飛び出た。

おそらく追いかけてきている彼。

ちら、と振り向いてみれば

ずいぶんと近くまで追って来ていて、

「棗ちゃん待って…！」

！！

ゾンビが追いかけて来るような

必死さで全速力で走る私の腕を掴んだ。

ああ、もうだめだ。食われる。

ぜえ、はあ、と大袈裟に肩で息をする

ゾンビを思い切り睨み付けたのが

最後の抵抗。

「逃げるとか、ひどいなあ」

「、セクハラ」

あはは、と笑った。

ブンブンと掴まれてる腕を

振ってみてもガッチリと掴み

離してはくれず。

「なんの用ですか」

へらへらと曇りのない笑顔を浮かべると

また、名前を呼んだ。

「何で名前知ってるのって顔してる」

そう言うと掴んでいた腕を緩め

今度は手を握った。

「は？！ちょっと、離して！」

私の手の甲には昨日の『陽』の文字。

薄っすらだが確かに500円程の

大きさが残っている。

そりゃあ油性で書いたのだから

一晩で落ちることなどないだろう。

「油性って落ちにくいから、いいね」

満足そうな顔で。

人に手を見られるのは

違和感があってむず痒い。

それを隠す様に思い切り手を引っ張った。

「で、何か用」

冷たく言い放っても無邪気な笑顔で

そうそう、と続けた。

「これ、」

シワができてる一枚のプリントを

手渡す。