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玄関でのこと。
彼の手が触れた壁は、罅が入るでも消えるでもなく、崩落――文字通り崩れ落ちた。
「…言っただろ。触れば崩れる、って」
"触れば崩れる"。
転弧さんの意思に関係なく、条件を満たせば発動してしまうのだろうか。
思わず自身の手を見る。…罅も崩れるような兆しもないが。
「…遥のときは、小指、放してたから。崩れなかった」
私の手を握ったときは、確かに小指だけ触れていなかった。
つまり「触る」とは、「五指で触れる」ということか。
…言い換えれば、指先一つでも触れなければ、崩れないということだ。
「手、出してもらえますか」
「…?」
訝しげな表情ながらも、片手を向けられる。
その手を取って、救急箱にあった細めの包帯で、小指を覆った。
「!!?」
手を引かれそうになるが、力負けはする筈もなく。
小指だけ包帯で覆った手を、私は今度こそしっかり握った。
「これで、ちゃんと繋げますね」
「…変な奴」
顔を背けられてしまったが、手は握り返してもらえた。
ちらりと見えた赤い耳に、笑みが零れてしまったのは仕方ない。
.
.
.
その後、自分の個性や兄について少し話していたのだが、気づけば外は大分暗くなっていた。
「…そういえば、随分引き留めてしまったのですけど…時間、大丈夫ですか?」
転弧さんの家族に連絡もなく、こんな時間まで帰らなければ心配するだろう。
「あー…うん、大丈夫だけど…戻ろうかな」
送っていくと提案したが、遠くないから大丈夫だと言われてしまった。
まあ、あの河原周辺に住んでいるなら、確かに遠くはないのだけれど…。
「それじゃあ…気を付けて」
「ん」
結局、家から少し出て別れた。
(戻る…って言ったのは、ちょっと引っかかるわ…)
彼と入れ替わるように鋼兄さんが帰ってきて、玄関の惨状に表情を変えずに驚いていた。
***
余談であり持論ですが、マギ3巻&アニメ6話のモルジアナちゃんがすごくヒーローでした(語彙力)
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らべんだー - いつも楽しませていただいてます!アリババ君は出てくるのでしょうか、、出てきてほしい!です! (2020年5月6日 1時) (レス) id: e9a4cf0eda (このIDを非表示/違反報告)
AYAAYA(プロフ) - 握力で測定器へし折りそうだねー (2019年6月22日 17時) (レス) id: df90ade64c (このIDを非表示/違反報告)
李鈴(プロフ) - あぁぁ、最っ高!こういうの欲しかったんです!ありがとうございます(><) (2019年2月12日 9時) (レス) id: ff3f8f1243 (このIDを非表示/違反報告)
操菜 荘椏(プロフ) - 続きが気になります!頑張ってください! (2019年1月8日 22時) (レス) id: 973a3c6c76 (このIDを非表示/違反報告)
やっかちゃん(プロフ) - 夢小説読みまくった私にとってはそんなに違和感は感じないですが、作者さんの好きな風に書くものですから、今考えてるという案で全然問題ないと思いますよ!最後に、ヒロアカの推し全く一緒でした嬉しいですいつも楽しく読んでます更新楽しみにしてますね! (2018年11月6日 23時) (レス) id: 37cb2170f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灰猫 | 作成日時:2017年8月28日 6時