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彼の手を引きながら帰宅すると、まだ鋼兄さんは帰っていなかった。
「ただいま」
「遥、おかえりー。…あら、その子は？」
「…手当を、しようと思って。お母さん、救急箱は」
「確かいつもの場所に…取ってくるわね〜」
母が出迎えてくれたが、すぐに家の中へと戻る。
救急箱やタオルなどを用意してくれているのだろう、私が怪我をしたときと気配の動きがよく似ている。
「…」
「引っ張ってきてしまってすみません」
彼は家に来るまで抵抗もなければ会話もなかった。ずっと黙ったままなので、何か意思表示の一つでもあれば…
「とりあえず、上がってください。傷の手当を、」
「いらない」
…「何か」とは言ったものの、拒絶が返ってくるとは思わなかったけれど。
「…見返りなんてないぞ」
「？…何を、」
言っているのか、分からないんですけれど。
後半は言葉にならなかった。
彼が、壁に触れた直後、その箇所が崩落したことに、目を奪われたから。
「…え」
「誰も助けてくれなかった…それこそヒーローですら…みんながみんな、見ないふりをした…『その内誰かが』って、居もしない『誰か』に頼って…子供一人助けるにしたって、金と名声がなきゃあヒーローだって動かない…あんな傲慢で独善的な偽善者ども…人なんてみんなそんなもんだろ…！？」
…彼は同年代の子達には難しいだろう言葉で、数々の罵詈雑言を吐いた。主にヒーローへ向けて。
彼がヒーロー嫌いだということは分かった。偽善者、そう捉えることもできる。
でも、一括りにそうとは言えない。
ヒーローなんて名称はなかったけれど…計算も善も悪もなく、他人の命のために、たくさんの人が守ってきたもののために、身を投げ出して助ける人を、私は知っているから。
「…ヒーローじゃなくても、人助けはできます」
感情の限りの悪態を吐いて俯く彼に、私は改めて手を差し出した。
「あなたの傷を見て、手当をしなければと思った。助けたいと思った。これでは、理由になりませんか？」
…少し大仰だったか。
こちらを凝視する彼に、尚も手は差し出したまま、一人ごちる。
「…触れば、崩れるぞ」
「私、それなりに頑丈なので。大丈夫ですよ」
「…」
遠慮がちに、弱々しく、けれどしっかりと。私の手を握ってくれたことに安堵して、思わず口元が綻んだ。
(小指だけ離しているのは、個性の関係かしら…？)
(こいつは…何故か、崩したくない)
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らべんだー - いつも楽しませていただいてます！アリババ君は出てくるのでしょうか、、出てきてほしい！です！ (2020年5月6日 1時) (
レス) id: e9a4cf0eda (このIDを非表示/違反報告)
AYAAYA(プロフ) - 握力で測定器へし折りそうだねー (2019年6月22日 17時) (レス) id: df90ade64c (このIDを非表示/違反報告)
李鈴(プロフ) - あぁぁ、最っ高！こういうの欲しかったんです！ありがとうございます(><) (2019年2月12日 9時) (レス) id: ff3f8f1243 (このIDを非表示/違反報告)
操菜 荘椏(プロフ) - 続きが気になります！頑張ってください！ (2019年1月8日 22時) (レス) id: 973a3c6c76 (このIDを非表示/違反報告)
やっかちゃん(プロフ) - 夢小説読みまくった私にとってはそんなに違和感は感じないですが、作者さんの好きな風に書くものですから、今考えてるという案で全然問題ないと思いますよ！最後に、ヒロアカの推し全く一緒でした嬉しいですいつも楽しく読んでます更新楽しみにしてますね！ (2018年11月6日 23時) (レス) id: 37cb2170f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灰猫 | 作成日時：2017年8月28日 6時
