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宣杜Aの凄いところは普通であれば人間が無意識にしてしまう表情変化や仕草をせず、平然としたまま思考を張り巡らせるところだ。
壁と仮面が多すぎて、ひとつ壊してもまだまだ遠い。マトリョーシカの要領。
『英敏には聞かせられない汚れた話だよ』
「そういうなら、話す気がないわけではないんだな」
『まあね。でも、今はそういう気分じゃないや』
「ああ。別に急かしてるわけではない」
ただのきっかけ作り。
こうすればA自身で順序を立てて情報を開示する。
自分以外のことは勝手に喋り続けるのに、自分の話はしたがらない。
だからこそ知ったときの優越感が一入で、俺の中の何かしらの感情が満たされる。
誰も知らない宣杜Aのことを俺だけが知っている。
そんな状況を作ることに必死なことに、Aは気付いているだろうか。
恋をしてから、様々な感情を身を以て知った。
恥じらい、悋気、独占欲、束縛。
それをされて恥ずかしいことから、嫌なことまで。
Aは自分のセクシュアリティに付き合わせている後ろめたさを未だに抱えている。
そんなこと気にせずとも、俺は初めて目に入れたあの日からお前のことが忘れられなかったというのに。
今思うと俺だって一目惚れをしていたかもしれない。
知らなかっただけなのだ、恋愛感情の何たるかを。
たられば話はAには効き目はなさそうで、言ったことはないけど。
"本当にお前は俺のことが好きだな"
そうであると本気で思ってるときも、そうであってほしいと願いときも言う。
俺の欲を子供みたいな可愛さだと思っているAはまだ気付かない、とっくに純情さを捨てて人間らしい感情を持っていることを。
"我儘な王様"であるほうが都合がいいこともあるけど、俺も大人であることを知ってほしい気持ちもあって。
Aが俺のことを殺したいくらい好きなことを、自覚している。
それを教えてきたのは向こうなのに、俺が気付いてないと思っているのは馬鹿だ。
死なば諸共、一蓮托生、無理心中。
もう俺は宣杜Aがいなければ生きていけない。
俺の人生を歪ませたと思っているのは別にいいが、責任を取るなら死ぬまで一緒にいてくれればいい。
綺麗な野上英敏はもう、どこにもいない。
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互いにこうなったのは相手の所為にしてるのに(9-2/野上sideあたり)
相手のほうが綺麗だと思っているダメなカップル
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