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『…うん』
「"恋人にしたい"とも言った」
『恥ずかしいな、掘り返さないでよ』
「宣杜A」
『、はい』
「俺はお前のことが」
『ちょ、まって…』
その先を聞いたらいけない気がして思わず身体を離し制止をかける。
脈絡が正しければ、だって…そんな、望みなんて。
遅いはずなのに、もう手放したはずなのに。
そうやって野上は自分の足で俺のなかに入り込もうとする。
今度は自覚のないものじゃない、意志を持った感情。
『野上はそれでいいの』
「なにが」
『俺、だって…』
「今更何を怖がっている。その抵抗心はなんだ」
『えっと、』
失恋したつもりだったから、なんて言えない。
勝手に傷心になって初々しい恋心とはおさらばとか、初恋って本当に叶わないんだなとか色々考えてたなんて言えない。
遅いって言い訳してそんな野上の感情から逃げようとしてる。
あれ、俺もしかしてめちゃめちゃカッコ悪い？
当たって砕けろの精神だったから、色々としでかしたけど。
ちゃんと向かい合って俺に歩み寄ってきた野上の顔がまともに見れない。
野上俺のこと好きじゃん、っていうの冗談交じりだったし。
その、え？野上本気でその…俺のこと、恋愛的な意味で、好きってことですよね。
うわ、恥ずかしい。
俺だって純粋な恋愛は初めてなんだ、これが愛を貰うってことなんだ。
嬉しいのに擽ったい。
ずっと求めてたものがいざ目の前にあると直視できないなんて。
『帰ってこなければよかった…』
「はあ？何を言っている」
『今、めちゃめちゃ恥ずかしい』
「だから何の話を」
『野上俺のこと好きなんだ……』
「はぁ！？何を、いや…ああ、もう！」
これだからこいつといると調子が狂うんだ、そういつもみたいに喚く野上の小言が心地いい。
わしゃわしゃと頭を掻いて、俺の顔を真正面から見つめる。
ああ、いつもの真っ直ぐな瞳だ。
「宣杜、お前は俺のこと好きか？」
『へ』
「どうなんだ」
『え、と……』
「…もう、冷めたか？」
『好きです！！！大好き！ずっと好き！忘れられるわけない！』
野上が寂しそうな顔するから、つい反射で好きが溢れてしまった。
本心なんだけど、おかしいな俺このままじゃ野上のこと諦めつかなくなりそう。
俺の言葉に満足そうに、されど顔真っ赤にして照れてる野上を見て、息を呑む。
か、可愛すぎる。野上ってこんなに可愛かったっけ。
「どうやら俺は、お前のことが好きらしい」
『…うん』
「宣杜が好き」
『俺も、野上が好きだよ』
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