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感情が忙しい野上は色んなことにご立腹みたい。
俺が手を貸したことも、そうなった経緯も、今の現状も。
こういう時こそ甘いものを。渡しそびれていたラッピングを野上の前に突き出す。
「？」
『ハッピーバレンタイン』
「……なんだ急に」
『英敏も欲しかったんじゃないの？』
他の奴らとは違って綺麗にラッピングされたものは、ながらで野上のためだけに作ったもの。
所謂本命チョコ、というものだ。
この島でこんなこと出来る時代になるとは思わなかったが、バレンタインという文化に真摯に向きあったのは今年が初めて。野上はいつも俺に初めてを与えてくれるなあ。
「俺に用意する余裕あったんだな」
『こっちが本命だよ』
「……ふん」
丁寧に包装を解いてチョコを口に含む野上は、無言のまま咀嚼する。
料理をするわけではないが、数値が出ているものを作ることは簡単なことだ。味は普通以上のはず。
機械的に作れてもそれ以上のものは生み出せないのが俺の欠点ではあるが、最大の調味料は愛って言われてるから問題ないだろう。
「美味しい」
『普通の味でしょ』
「…Aが作ったから美味しいんだ」
わかれよ、と言うように野上がこちらに目を向ける。
純粋な野上の瞳は、嘘を吐くことはない。
ああ、いつもこの人は俺を満たしてくれる。
普通に思えることも全部特別に思える、野上でないと意味がないものばかり。
「だらしない顔をするな」
『幸せすぎて、つい』
「相変わらず調子のいい男」
一つずつ丁寧に食べていく手は男にしては細くて綺麗で。
唇についたチョコを舐めとる仕草がどうも艶やかで。
そんな野上を見てたらなんだか浮ついた気持ちになって。
気付けば唇を重ねてて。
びっくりした顔をしている野上を尻目に、甘いななんて考えたりして。
歯列をなぞるのもなんだか、チョコを食べてるみたい。
余ったチョコでチョコプレイとかしたら怒られるかな。
野上から離れながら、余計なことを考えた。
『ごちそうさま』
「…外だぞ、ここ」
『嫌だった？』
「嫌じゃないのわかってるくせに」
『まあね』
満更でもない野上の顔に更に気分が高揚する。
本当に、素直になったものだ。
『来月楽しみにしてるね』
「？」
『バレンタインのお返しくらいしたことあるでしょ』
「……あると思うか」
『………え、マジ？』
「笑うなら笑え」
『慣れてたら殴っちゃうところだった』
「DV彼氏やめろ」
『しないって』
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不在の間に謎の♡機能増えてますね
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