【メンズ校】Amour à l’infini ③【男主】 (ページ35)

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※第三者視点

　

おかしい、これは牧が朝に感じたことだ。

「野上どうしたの」
「別に」

昨日帰って来たときはあんなにご機嫌だった野上が、次の日になればぎこちない。
普通の人にはいつもの野上に見えるだろうが知ってる人が見れば一目瞭然。

対して宣杜は元気だし、心なしかすっきりしている。

言い合いでもして野上が負けたのか、腹の内を見せあったのかはわからないが喧嘩をしてるわけではなさそうなので牧もそこまで首を突っ込む気はなく。

　

野上は自習室で花井と桃井に質問責めにされていて、恋バナのようなものをしてるんだろうと牧は考える。自分で宣杜とは違う場所に行ったのに、ちらちらと宣杜を見ているのは見なかったことにしてあげよう。

そんな牧の気遣いは届くことはなく、同じく気付いていた花井に揶揄われていた。
立場の弱い野上が珍しくて牧は笑ってしまう。

牧がその場から180度視界を変えると、食堂で源田の味変研究を眺めているのが伺える。

これは見ていて面白い、と宣杜が源田を褒めるものだから野上が嫉妬していたのを思い出す。
宣杜は育ちが良いからなのか味覚が人より冴えていて、よく調味料クイズをするなど意外と仲良くしていた。

宣杜に友達が増えて嬉しい気持ちと寂しさと嫉妬で野上はヤキモキしているが、宣杜はこういう時に察しが悪いのだ。

「野上と何かあった？」
『まあね』
「宣杜的には良いことだったんだ」
『それはもう勿体ないほどに』
「そっか」

一応宣杜にも聞けば隠す気はないが言う気もない態度でニコニコとしている。
まあこの男に異変がないならふたりは大丈夫なのだろうと安堵しながらそのまま椅子に腰かけた。

「今朝野上がおかしかったんだよね」
『はは、可愛いじゃん』
「宣杜に聞いたのが馬鹿だった」

そもそも宣杜がこんなわかりやすく幸せ感情を出している時点で珍しいが、牧はこの学校で一番最初と言ってもいいくらい感情を剥き出しにされているので感覚が狂っていた。
周りは近くを通るたびに宣杜を二、三度ほど見ている。これが普通の反応だ。

　

しばらくするとやれやれ、といったように宣杜が立ち上がって野上の座っている場所に歩いていった。

嬉しそうで楽しそうなその背中を牧と源田は見送ってから、顔を合わせて肩を竦める。
戻って来たときにはまたあのふたりはイチャイチャしてるんだろうと簡単に想像できたからだ。