【メンズ校】Amour à l’infini ③【男主】 (ページ14)

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ゆっくりと触れ合う唇は、人間の温かみがあって擽ったい。
俺よりも厚くてふっくらした宣杜の唇は何度も堪能するように俺を支配する。

明らかに初めてじゃない宣杜のそれに少しだけ、見えない過去に嫉妬する。

でも俺を見る愛おしそうな瞳が、顔を撫でる手のひらが。
幸せそうな宣杜を見るとそんな悩みが全部馬鹿らしくなって、笑えてくる。

俺もまたこいつに溺れてしまったのだと呆れ。

『野上かわいい』
「お前は随分と幸せそうだ」
『野上が隣にいるのが嬉しくて』

子供みたいに喜ぶ宣杜は俺の手を握って歩き出す。

自然の空気感が好きなのだと、いつもこいつは海へ赴く。
ここは息苦しくないから気が楽とも言っていた。

「宣杜」
『なぁに？』
「言いたくないなら答えなくていい。お前は」

俺の言葉に宣杜は少し驚いたあと、頷いた。

LGBTは今でこそ広まりつつあるもの。
それでも世間は偏見を持ってしまうものでもある、ましてや跡取り息子がそうであるなんてこと、言えるわけもない。

俺はホモセクシュアリティではないから、こいつの気持ちを全て理解してあげることも出来ない。
けど、もう離したくはない。

『花井に聞いた？』
「あいつは最後まで黙り通すだろうな」
『気持ち悪いでしょ』
「お前は俺がそういうと思ってるのか？」
『……優しいから、言わないだろうね』

物心ついた頃にはその違和感に気付いたのだと。

これではやっていけないと無理やり矯正しようとしたこともあるらしい。
何をしたかまで聞くことはなかったが、おおかた予想はつく。

宣杜が色々と慣れているのはその過程があったからなのだと納得。

『野上は、本当に俺でいいの』
「俺を殺したいなら今すぐ見放せ」
『そしたら俺も一緒に死ぬよ』

俺でいいのかと何度も確認するのは、まだ不安だからなのか。
お前がいないと呼吸の仕方も忘れそうになるのに今更何を言っている。

相手のことを生かしたいとか、自分の分まで幸せになってほしいとか。
そういう綺麗事を言えないくらい、俺も宣杜も互いを求めている。

死なば諸共、一蓮托生、無理心中。

綺麗な言葉で表せない関係はどこまでも深く、尊い愛で満たされていた。