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「お前が言ったんだぞ、俺に。"野上がそこにいてくれればよかったのに"って。だから俺もお前がそこにいればいい」
野上は頭が良い、賢い。よく回る脳味噌。
あんな状況で一言一句覚えてるんだから、野上って俺が思ってる以上に俺のこと好きなのかも。
この人はやっぱりヒーローみたいに救いの手を差し伸べる、俺の希望。
不器用なところが多いけど、優しくて温かいひと。
『野上』
「なんだ？」
『好きです』
「飽きないな…」
『俺と付き合ってください』
「ああ。……ん？」
『え、あ。告白タイミングってこれじゃない？恥ずかし。忘れて』
「いやそうじゃなくて」
腕を組んで考え事をする野上は一旦自分の思考世界に入る。
少し唸りつつ、考えが纏まったのかじわじわと顔が赤くなり、頭を抱えだした。
どうしたんだろう、野上。秘蔵映像隠し忘れたのかな。
「宣杜」
『はい』
「俺と、お前は…両想い、だよな？」
『野上が俺のことを好きって言ったのが嘘でなければ』
「好きなんだよな？」
『もちろん』
「……どこからが、恋人の境界線なんだ？」
『へ？なんだろう…お付き合い、してから？』
「好き同士だが、お前的に俺たちはまだ付き合って？」
『ない…？と思ってたんだけど、え？野上は』
「ちょっと待っててくれ」
見えなくなるくらい全力で走っていく野上を俺は止めることが出来なかった。
ポツンと小さい影は海に向かって何かを叫んでいる。うまく聞こえない。
そのまましばらくして、向こうから野上が戻ってくる。
謎に決意を纏ったその姿はなんだか男らしい。この数分で何があったんだ。
「OKだ」
『なにが？』
「その告白、受ける」
『…！本当に？』
「ああ。正式な恋人関係だ」
『嬉しい』
嬉しくて野上を抱きしめる。離さないように大事に、強く。
身長差で俺の中にすっぽりと入る野上はぎゅっと俺の背に腕を回す。
それがまた愛らしくて、幸せで、
『ねえ野上』
「ん？」
『12cmってキスしやすい身長差らしいよ』
「ふーん、試してみるか？」
俺を見上げてそういう野上の言葉が合図となり、そのまま唇を重ねる。
あの時とは違ってかさついていない野上の薄い唇は、食べてしまいたくなるほどに甘くて蕩けそう。
キスが下手くそな野上はすぐに酸素を求める。いつ鼻で呼吸することを教えようかな。
野上の全部が可愛らしくて、少し意地悪してしまう俺を許してね。
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これで正式なカップル成立です。長かったですね、52話かかりました。
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