呪術師辞めろと言われたら死んだ。【五条悟】 (ページ9)

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chapter*2-2...初恋の再来ページ9

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「あの？」

　何がしたいのか分からない。いきなり話しかけてきたと思えば隣に立つし、離れようとすれば腕を掴まれる。しまいには笑われた。顔はいいのに行動は不審者極まりない。だって、私たちは知らない人で。
　いまだ笑い続ける男に、ため息を吐いた。

「いい加減にしてもらえます？」
「え、やだよ」

　すん、と表情を落とした男は、戸惑いもなくそう言いきった。

「なんで？」
「離したらどっか行くでしょ」
「当たり前では？」
「だからだーめ」
「いや離せよ」

　腕を振ろうにしても力が強すぎる。ビクともしない。なんで？
　なんで私は名前も知らない初対面の人に腕を掴まれてるんだろう。こういう時は警察？警察呼べばいい？周りの人が通報してくれるとありがたいんだけど、多分ただの修羅場とかじゃれ合いとかに思われてそうで頭を抱えたくなった。

　もう自分で通報するしかない。スマホをポケットから取り出して、ロックを解除した瞬間。ぴこん、と一件通知が飛んできた。

『ごめん！今日行けなくなった！』

　続けて可愛らしいスタンプが送られる。送り主は、待ち合わせをしていた友人からだった。
　ふーん、と心做しかワントーン上がった声が聞こえて、慌ててロックをかける。見られた、たぶん。もしかしてやばい？

　ぎゅっと力が強くなって、反射で「いた、」と飛び出たけど、本当はそんなに痛くはない。痛くはないけどなんで力を強めたんだこの人。

「あ、ごめんねー」
「そのまま離してもらえたら嬉しいんですけど」
「何回言わせる気？いやだって言ったよね。それより友達との予定が無くなったなら僕に付き合ってくれない？」
「嫌ですけど！？」
「拒否権はなーし」

　急に腕を離されて驚いてる間に今度は手を握られる。ただ手を握られるだけならまだしも、いや良くないけど、指を一本一本丁寧に絡めたそれは世間一般で言う恋人繋ぎだった。

「え、あの、」
「僕、行きたいところあったんだよね！」

　いい笑顔でそう言った彼は、私の抵抗も虚しく力強く引っ張って歩き出してしまった。
　待ってと言っても止まってくれない。離してと言っても離してくれない。どうしようこれが誘拐とかだったら。不安がちらり、と顔を覗かせる。それに気づいているのかいないのか、引っ張る男は前を見ていてその顔は見えなかった。

　てゆーかこの人はなんでここに居たんだ？
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