chapter*2-6...初恋の再来 ページ13
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思っていたことを言い当てられて驚いた。
「いやーわかりやすくていいね!」
「一発殴らせてもらっていいですか?」
「嫌に決まってるでしょ。今は当たるんだから」
「は?」
「おーこわ」
「警察呼びますね」
「呼んだところでただの痴話喧嘩として思われるだけだと思うけど」
「いや、多分連れてかれますよ」
「は?」
何か手入れをしているのかと疑いたくなるほどの白くて長いまつ毛が、二、三、と上下に動く。今度は彼が驚いたかと思うと、す、と目を細めた。口元は相変わらず笑みを浮かべているけれど、なんとなく、雰囲気が変わったような気がした。
連れていかれるかまでは分からないけど、少なくとも職務質問はされるはずだ。だって、彼はかなり幼い顔立ちをしているけれど歳上だろうし。少なくとも成人はしてるだろう。聞いてないから実際のところはわからないけど。もしかしたら同じ歳かもしれないけど。
でも、クラスメイトの顔を順に浮かべていっても彼のような人はいないからやっぱり歳上で確定しても良さそう。
身分証として提示出来るようにいつでも持ち歩いてるそれを鞄の中から取り出して、どうぞ、と見せた。
差し出されたそれを見た五条は目を丸く見開いて、うそだろ、と小さな声で呟いた。それを見て私はにっこりと笑う。
「おにーさん、歳いくつなの?」
「……二十五」
「警察に連絡していい?」
「いやごめんやめて。待って」
長時間晒しているのも嫌なのでそれ――学生証を元の場所にしまう。あー、と頭を抱えてしまった五条さんに、少しだけいい気分になる。初対面の相手を勝手に連れ回そうとする人でも、そこら辺の常識はあるみたいだ。
話し込んだせいで少し温くなった珈琲に口をつけて、得意げに笑ってみせる。ブツブツと私には聞こえない声量で何かを言う五条さんを無視して、ずっと手をつけていなかったタルトを一口サイズに切り分け口の中に放り込んだ。
「あ、美味しい」
「そりゃよかったよ」
「おにーさんも食べないと勿体ないですよ」
「そのさぁ、おにーさんって言うのやめない?」
「おにーさんはおにーさんでしょ」
「僕には五条悟って名前があるの」
「聞きましたねぇ」
「悟って呼んでもいいんだよ?」
「お断りします、五条さん」
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希乃夏(プロフ) - pixivでも見させて頂いていたものです!!占いツクールでも公開してくださりありがとうございます!!更新頑張って下さい!! (2021年3月22日 12時) (レス) id: 1e5270c5a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:仁篠。 | 作成日時:2021年3月22日 11時