chapter*1-2...大嫌いだから、生きていて。 ページ2
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「は?」
「なんで、そんな、突然」
「そんなの決まってんだろ」
その後の言葉は、聞かなくてもわかる。わかるけど、だからと言って納得が出来るわけない。
聞いたのは私だけど、その先の言葉は言わないで欲しかった。やめて、と言葉にならない音だけが僅かに開いた口の隙間から零れる。
五条にそんなただの音は聞こえていないのだろう。わざとらしく大きなため息を吐き出して、言葉を続けようとする。
やだ、やめて。おねがい。阻止しようにも、体は固まって動かなかった。
「お前が弱いからだよ」
言われてみれば、妙に冷静になれた。すん、と昂った感情が収まっていく。無意識にカタカタと音を立てていた歯は収まり、いつも通り。あれだけやめてくれと叫んでいた心は、なぜか穏やかだった。
五条の言ったことは、何も間違っていない。ただひとつの事実だった。そりゃ、五条に比べれば誰だって弱いものに分類されるだろうけれど。
そうだ。そうだよ。どれだけ訓練を積んだって強くなれない私は、五条にとっては、否、五条にとっても邪魔なんだろう。
元々なりたくてここにいる訳でもない。それなら、辞めたって私にとっても何も不利益なことは起こらない。むしろどれだけ追いかけてもたどり着けない背中を追い続けるよりも、ずっと幸せに暮らせるような気がした。
私が弱いのは誰もが知っている事実だ。私自身も、きっと今以上になんてなれないと早くも限界を悟ってた。だから、これはちょうどいい機会。わざわざそれを五条が与えてくれた。そう考えると、やっぱり心は穏やかだった。
「今日の任務も、」
「いいよ」
五条の言葉に被せた。いいよ、辞める。そう言って笑うと、五条が驚いたようだった。キラキラと輝く宝石のような、澄んだ青空のような綺麗な瞳をまん丸にしているのだろうと、雰囲気でわかった。
何をそんなに驚いてるんだろう。辞めろと言ったのは五条で、それをただ両省しただけなのに。呪術師は万年人手不足だから、ひとりでも減ったら困る? じゃあ辞めろと言わなければ良いだけ。五条はそこまで考え無しに行動する人でもない。だから、どうして五条がそんなにも驚いているのかわからなかった。
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希乃夏(プロフ) - pixivでも見させて頂いていたものです!!占いツクールでも公開してくださりありがとうございます!!更新頑張って下さい!! (2021年3月22日 12時) (レス) id: 1e5270c5a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:仁篠。 | 作成日時:2021年3月22日 11時