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第3話「包帯さんは危ない人」 ページ5

ハンカチで身体を拭いた蓮華はすぐに襟巻で髪と顔を隠した。その時、



「うおっ!」



突然起き上がった青年に敦はギョッとした。



「あ、あんた川に流されてて………大丈夫?」

「助かったか……………ちぇっ」

『「ちぇっ」つったかこの人!?』

『うわこの人面倒くさそう』



固まる二人を他所に青年は続ける。



「君達かい?私の入水を邪魔したのは」

「邪魔なんて僕は助けようと………入水?」

「知らんかね入水。つまりジサツだよ」

「「は?」」

「私はジサツをしようとしていたのだ。それなのに君達が余計な事を」

「は、はあ………」



面倒を通り越して危ない人だった。
今まで色んな人間と渡り合って来たがこんな変人は見た事ない。



「まあ、人に迷惑をかけない清くクリーンなジサツが私の信条だ」

『逆に清くクリーンなジサツって何やろう』

「だのに君達に迷惑をかけた。これは此方の落ち度。何かお詫びを」



ぐううううう



敦の方から変な音が聞こえた。
流石にチョコレート一個じゃ空腹を凌げなかったらしい。



「……空腹かい少年?」

「じ、実はここ数日何も食べてなくて」



ぐううううう



「………まさか」

「私もだ。ちなみに財布も流された」

「ええ?助けたお礼にご馳走って流れだと思ったのに」

「本音だだ漏れですよ」

「?」

「?じゃねえ!」



何だかこのやり取りだけでどっと疲れた気がする。
思わず深い溜息を吐くと、向こう岸から声が聞こえた。



「こんな処に居ったか唐変木!」



其処には眼鏡をかけた青年が腕組みをして立っていた。
何処か不機嫌そうな彼に包帯の青年は呑気に手を振った。



「おー国木田君ご苦労様」

「苦労は全てお前の所為だこのジサツ嗜癖!お前はどれだけ俺の計画を乱せば_____」



包帯の青年の言葉に蓮華は目を見開いた。



『また文豪の名前…?』



“国木田”、おそらく国木田独歩。
敦の時といいこんな偶然が重なるとは。
いや、これは偶然なのか?



「そうだ君達。良いことを思いついた。彼は私の同僚なのだ。彼に奢ってもらおう」

「へ?」

「あら」



後ろから国木田が「聞けよ!」と怒声が聞こえた。
だが包帯の青年は気にせず続ける。



「君達、名前は?」

「中島………敦ですけど」

「……花柳蓮華,と申します」



蓮華は少し顔を反らしながら云った。

第4話「吸血鬼と文豪達」→←第2話「川から足がなんとやら」



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設定タグ:文スト , 原作沿い , 吸血鬼   
作品ジャンル:アニメ
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星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!気に入って貰えて嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2019年7月31日 21時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
赤砂晋助(プロフ) - この話好きやけんこれからも頑張ってください! (2019年7月22日 9時) (レス) id: 5ddd851753 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - 三輪さん» 実はそうなんです!バリバリの関西弁ではないのですが、気に入って貰えて何よりです!これからもよろしくお願いします! (2019年6月24日 15時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
三輪 - 吸血鬼ネタ最高です……!蓮華ちゃんが可愛い。。それとつかぬ事をお伺いしますが、作者さまは関西圏出身なのですか?方言が刺さります! (2019年6月24日 15時) (レス) id: e6d66e6ea7 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!!私も吸血鬼ネタが大好きで作りました!これからもよろしくお願いします! (2019年6月2日 23時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星木雪野 x他1人 | 作成日時:2019年6月2日 17時

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