第2話「川から足がなんとやら」 ページ4
「時に敦さん、お訊ねしたい事があるのですが」
「何?」
「此処は一体何処ですか?」
あの時,腹部を刺されて致命傷を負った。
だが傷は跡形も無いし、自分は生きている。しかも見知らぬ土地で倒れていた。
何が起こったのかを知る為に訊ねた問いに彼は何て事なく答えた。
「此処はヨコハマだよ」
「え………」
想像をはるかに超える回答だった。
自分が刺されたのは横浜などではない。いや、都会ではあったが横浜からかなり遠い場所だ。
だけど彼が嘘を吐いていない事は目を見れば判る。
蓮華は事の深刻さに項垂れた。
「マジかぁ………」
「蓮華ちゃん?大丈夫?」
「大丈夫ですよ、……多分」
ぼそりと呟いた声は彼には聞こえなかったらしい。
普通ならもっと慌てるものなんだろうが、元々吸血鬼である彼女は冷静だった。
「そういえば、蓮華ちゃん関西の人なんだね……」
「え?……あぁ、親が関西出身でしたから」
懐かしそうな声色に敦は首を傾げた。
蓮華は襟巻で顔が隠れてしまっているので表情が読み取りにくい。
そんな敦の事は気にも止めず,彼女は先程から川の方を見つめている。
「敦さん,あれ…」
「え?」
彼女が指を指す方を見ると其処には川があった。
いや、彼女が指しているのは川に流れている_____
「足………?」
「足ですね………」
川から生えているかのように流れていく人の足。
だが二人が呆然としている間にも其れは沈んだり鳥につつかれたりを繰り返していた。
「ええい!」
「敦さん!?」
いきなり飛び込んだ敦。おそらく助けに行くのだろう。
蓮華も襟巻を取ると彼に続いて川に飛び込んだ。
***
「何なんやもう………」
流れる足の正体は酷く顔立ちの整った青年だった。
これで包帯さえ無ければモテそうだな、と思いつつ蓮華は濡れた髪を絞る。
「………!」
敦は此処で初めて彼女の姿を見た。
鮮やかな赤い髪、透き通った桜色の瞳。
雪のような白い肌とは対照的な血色の良い唇。
身体の所々には包帯や傷痕があったが,それでも彼女はまるで異国の地のお姫様のようだった。
「敦さん………ジロジロ見過ぎでは?」
「えっ!?あっごめん!」
顔を真っ赤にして目を逸らす敦に蓮華は少し口角を上げて笑った。
『………初心なんやなあ』
_____彼女にはこういった揶揄い癖があるらしい。
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星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!気に入って貰えて嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2019年7月31日 21時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
赤砂晋助(プロフ) - この話好きやけんこれからも頑張ってください! (2019年7月22日 9時) (レス) id: 5ddd851753 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - 三輪さん» 実はそうなんです!バリバリの関西弁ではないのですが、気に入って貰えて何よりです!これからもよろしくお願いします! (2019年6月24日 15時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
三輪 - 吸血鬼ネタ最高です……!蓮華ちゃんが可愛い。。それとつかぬ事をお伺いしますが、作者さまは関西圏出身なのですか?方言が刺さります! (2019年6月24日 15時) (レス) id: e6d66e6ea7 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!!私も吸血鬼ネタが大好きで作りました!これからもよろしくお願いします! (2019年6月2日 23時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星木雪野 x他1人 | 作成日時:2019年6月2日 17時