No.37 ページ37
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｢･･････えっと･･････｣
差し出した手の置き場に困っていると、怖々とた空気を醸し出しながらも、少女の手がそっと耳郎のそれに触れた。
｢･･････よろしく｣
名前を教える気はないらしい。
梅雨は一瞬困ったように眉を下げたが、直ぐに優しい笑顔で首を傾け、少女の顔を覗き込んだ。
｢お母さんは今家にいるの？｣
｢･･････多分｣
｢さっきは私達を助けてくれてありがとう、ケロ。でも一人で帰るのは危ないから、私達が家まで送ってもいいかしら？｣
兄弟のいる梅雨が持つ子供慣れした雰囲気にも、少女は固い表情で首を振った。
｢大丈夫です。自分一人で帰れます｣
｢でも、今みたいな人に、今度はあなたが襲われるかもしれないわ。ヒーロー候補生としてそれを見逃す事はできない｣
｢その時は倒します。だから心配しないで大丈夫です。お姉さん達こそ、帰る時は気を付けてくださいね。ここら辺、治安悪いっぽいし｣
少女の頑なに拒む姿に、きっと家を知られたくないのだろうと思った。何か事情でもありそうだ。綺麗なワンピースを着ているから、親に虐.待されている訳ではないのだろうが。
それに、彼女がそんじょそこらのヴィランに襲われる事はないだろう。何せ、ヒーロー科の耳郎達を助けてくれたのだから。
｢あのさ、良かったらお礼がしたいんだけど、｣
｢大丈夫です｣
｢なら、なんかお菓子でも奢らせてくれない？｣
｢大丈夫です。本当に大丈夫なんで。それより、お姉さん達帰った方がいいですよ。次同じような目にあったら大変なので｣
どうやら少女が公園で見守っている間に先に帰れという事らしい。ヒーローの風上にも置けないが、正直この地域の治安は想定以上に悪かったし、これ以上問題を起こして学校に報告されれば除籍処分の可能性も見えてくる。
何より、なぜかは分からないが、この少女が負ける想像が一つもつかなかったのだ。
梅雨も同じ事を思っていたのか、示し合わせる事もなく目が合った。
｢･･････ありがとう。じゃあ、私達は先に帰るけど、君もすぐ家に帰るんだよ｣
｢はい。心配かけてすみません｣
｢いいや、こっちこそありがとう。君が来てくれなかったらどうなってたか分からなかった｣
ヴィランに対する戦闘許可は、ヒーロー仮免許を取得しないと出ないのだ。
｢じゃあね｣
｢はい｣
公演を出てからも、角を曲がるまで、不思議な少女は耳郎達を見守っていた。
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リサ(プロフ) - とても面白いです。続き楽しみにしてます！ (2021年12月7日 20時) (
レス) @page14 id: 942b3344d9 (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - 面白いです！続き待ってます！！ (2021年12月7日 11時) (レス) id: 159bb94574 (このIDを非表示/違反報告)
クレア - 文が多いのにスラスラ読めて楽しい小説ですね、ここ(占ツク)に少ない雰囲気の作品なので、ちょっとラッキーな気分です(笑)！こういうの、私は好みですよ。 (2021年12月7日 9時) (レス) @page4 id: 730c5fdade (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エリンギ(サブ垢) | 作成日時：2021年12月6日 18時
