No.24 ページ24
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何かがおかしい。
午後三時を回ったのに、藍瀬の周辺には人っ子一人見当たらない。死穢八斎會の組員は、彼との約束を破棄したのだろうか。
いや、そもそも。
何でこんなに近い距離にいるのに、気付かない?
先程からあちらこちらで感じる妙な気配にうんざりする。
あの時と同じだ。指定の場所に待ち伏せされて、捕まえられそうになった時と。
またもや死穢八斎會の組員達だろうか。
これは確実に罠だ。依頼を遂行しようとすれば好機を見て捕えられるに違いない。
そうと分かっていても、Aは藍瀬を殺さなければならなかった。
嘘で塗り固められたヴィラン社会において、実績という信頼は何にも勝って変え難いものだ。
Aが“死神”と呼ばれ恐れられる所以は、失敗率0%という脅威的な奇跡の実力にある。
義爛のような絶対的な信頼が磐石になっていない今、一つでも依頼に失敗する事は許されなかった。
前門の虎後門の狼とは正にこの事である。
Aは藍瀬の立っている路地に面したビルの非常階段の踊り場から、音もなく手摺に乗り、体重移動の要領でグッと踏み込むと、藍瀬目掛けて突っ込んだ。
その瞬間、藍瀬が今気付いたとばかりに振り返って、カッと目を見開く。
「待っていたぞ、“死神”!」
やはりそうだったか。
Aは表情を変えずに太腿のナイフショルダーからナイフを取り出すと、藍瀬の首を狙って一閃した。階段の踊り場から身を乗り出して僅か0.03秒。ノーモーションの一撃だったにも関わらず、藍瀬は上体を軽く仰け反らせていなすと、小手調べとばかりにAの側頭部に回し蹴りを見舞った。膝をグッと折り曲げて避けた、と見せかけて右腕で蹴りつけてきた足をガード。そのまま左手に持ち替えたナイフで喉を一突き。これもまた、避けられた。
首、頭、胸。人体の急所という急所を、凄まじい連撃で狙うものの、藍瀬は薄ら笑みを浮かべて避けるばかりで反撃してこない。
そればかりか、藍瀬が離した間合いを詰める度に、どこかに誘導されているように思えてくる。
そして何より、このままジリ貧になって不利になるのは、子供で経験値も少なく、体力も成人男性には劣るAの方だ。
Aは舌打ちした。姿だけ見て逃げるのと会敵してから逃げるのとでは、会敵してからの方が癪に障ったからだ。
藍瀬がAの異変に気付いて怒鳴る。
「今だ!」
デジャブの様な鬼ごっこの幕開けだった。
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リサ(プロフ) - とても面白いです。続き楽しみにしてます! (2021年12月7日 20時) (レス) @page14 id: 942b3344d9 (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - 面白いです!続き待ってます!! (2021年12月7日 11時) (レス) id: 159bb94574 (このIDを非表示/違反報告)
クレア - 文が多いのにスラスラ読めて楽しい小説ですね、ここ(占ツク)に少ない雰囲気の作品なので、ちょっとラッキーな気分です(笑)!こういうの、私は好みですよ。 (2021年12月7日 9時) (レス) @page4 id: 730c5fdade (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エリンギ(サブ垢) | 作成日時:2021年12月6日 18時