03 禅子 ページ4
あれから、
兄はいつも通り
過ごしているようにみえる。
クラスも違うので
ほぼ会うことはないが、
クラスメイトとも
仲良くなったらしい。
僕は僕で
友人も出来て日々
穏やかに過ごしている。
『おはよー…、禅子。』
僕は教室にいた女子に
挨拶をした。
友人の藤原禅子だ。
「おはよ、A。」
少し真剣な表情をしていた。
『どうしたの？
なんか暗いね。』
「あのさ、昼休み、
相談があるんだけど…。」
相談か。なんだろう。
『うーん、わかった。』
昼休み。
「ねぇ、お昼一緒に食べない？」
「あ、ずるい！私たちと食べるの！」
あー…やっぱり、こうなるのか。
入学式以来ずっとこの調子だ。
花繪が倒れて保健室に運んでいた時期に
なぜか王子と言う異名をつけられて
しまったようで…。
昼ごはんや帰りに
よく声をかけられるように
なってしまった。
『ごめん。先約があるから。
でも、気持ちは嬉しかったよー。』
こうなることは
予測できていたので
禅子には先に行ってもらった。
『お待たせ、禅子。』
「うぅん、大丈夫。」
一緒にご飯を食べ始めた。
『そういえば、相談って？』
ご飯を食べたあと
僕は禅子に話しかける。
「Aは妖怪っていると思う？」
ん？んん？
なんで禅子が妖怪の話を？
『…妖怪…ってあの妖怪？』
「うん、多分、その妖怪。」
いや、見えてるんだけど…
なんて答えよう。
そう迷っていると禅子は話を続けた。
禅子から前に聞いていた
お父さんの笑い病。
それは、妖怪の仕業だったと
ハナエという不法侵入してきた
男に言われたそう。
その後、
禅子のお父さんの笑い病は治り
着物の男と共に押し入れに
消えたらしい。
『妖怪か…。いるんじゃない？』
「え？」
『だって、実際、お父さんの笑いは
止まったんでしょ？
二人は押し入れに消えた…。
いないと考えたら不可解だしね。』
「そっか。いるんだ。妖怪。」
禅子はどこか安心したような
顔をしていた。
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作者名：桜月 | 作成日時：2020年9月17日 3時
