第八十四話 -夜久side- ページ4
−−−−馬鹿じゃねえの、俺。
本当は、ガチガチに緊張して、一瞬一瞬視界に映るAに手を繋ぐ以上のことしたくて、でも必死に余裕ぶって、カッコつけて、意識してほしくて、でも結局決定的なこと何にも言えてねぇし。 あーもう、馬鹿どころか大馬鹿野郎じゃねえか。
水族館デートと夕食を終え、あっという間の帰り道。 自己嫌悪に陥りながら、Aと軽く談笑をしながら並んで歩いていた。
「あー、あのレッスンは今日から始まりんした」
「マジか。 の割には……」
話題は、吉原の姉さん事情から、Aの姉さんや後輩、そうして今日していたレッスンのことへとシフトしていっている。
ただ、頭の中で考えることは、水族館でのあの大きな水槽前でのこと。
…ちくしょう。
すっげえ恥ずかしかったあの言葉が、「もちろんでありんす! ぜひ共に行かんす!」で返されるなんて思ってもなかった。
しかもわかって言ってんのか、わかってないで言ってんのか、目ぇきらきらさせて、満面の笑みでなんて。 …もしかして俺、意識されてねえのか? だとしたらショックだわ…
必死に笑顔を作りながら歩く。 と、その時。 丁度話の切れ間だったからか、急にAがしゅんとして俺の名前を呼んだ。
「ん、どうかしたか?」
俺がそう声をかけてAの顔を覗き込むと、俯いてしまってから、Aは小さく話し始めた。
「…あの、急にこんな変なこと聞くのも野暮なんすが、夜久様は、どうしてわっちなんかのことをそんなに気遣って下さるのでありんすか…?」
吃驚した。
そんなの、お前のことが…、好きだからに、決まってるっていうのに。
「そんなの、」
「だって、夜久様は本当にお優しゅうて、大人びていて、お顔も整っていて、お話もすごく面白くて…、それだけではありんせん、もっとたくさんござりんす。 だからまだどうしてもわかりんせん。 わっちのようななんの取り柄もない子供をそんな風に扱うことが…」
俺の言うことを遮るように、いや、きっと俺が声を発したことなんて気づいていなくて、最初からこう、一気に続けるみたくして、Aはそう言い切った。
…もう、だめだった。
そんなの聞いたらもう、我慢できねえ。 お前のせいだぞ、A。
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多趣味のM(プロフ) - そこで!?って叫んじゃいましたw続き気になります!!更新待ってます!! (2020年10月18日 15時) (レス) id: 2c30e4e7ea (このIDを非表示/違反報告)
ねこ。 - 今まで読んできた吉原の小説で一番面白い作品です!頑張って下さい!私は作者様を応援しています! (2018年4月28日 12時) (レス) id: 8444393bfc (このIDを非表示/違反報告)
まむ(プロフ) - 何度も読み返させて貰ってます!大好きです!また更新されるのをまってます! (2018年3月10日 14時) (レス) id: f3b21a5c27 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 最初から楽しく読ませて頂きました!とても面白く、素敵な作品に出会えて嬉しいです、!それと同時に続きがとても気になります、、もう更新される予定は無いのでしょうか?大変だと思いますが、大好きな作品ですので更新楽しみに待っています!! (2018年1月29日 22時) (レス) id: f709374f1c (このIDを非表示/違反報告)
おばりょん(プロフ) - まだ、完結してませんよね??これからも応援してます! (2017年8月7日 16時) (レス) id: 571bd0a238 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星月夜 | 作成日時:2017年3月26日 8時